年度計画・報告  Annual Report


財団法人 武田計測先端知財団 平成20年度事業報告

(平成20年4月1日から平成21年3月31日まで)


1. 顕彰事業

日本のバイオベンチャーを応援するバイオビジネスコンペJapanに協賛し、「バイオ先端知賞」(賞金100万円)を提供した。

今年度は、平成21年2月にビジネスプラン発表会と選考会を行い、「新薬開発を支援する光分子イメージング技術の開発と事業化」というテーマで東京大学大学院理学系研究科化学専攻分析化学研究室の小澤岳昌教授が選考された。表彰式は、3月16日に大阪産業創造館で行われた。

2. 助成事業

第28回理事会の第2号議案の決定により、若手優秀研究者として政策研究大学院大学、 国際交流基金日本語国際センター国立国語研究所日本言語文化研究プログラム博士課程・研究生のウラムバヤル・ツェツェグドラム(Ulambayar TSETSEGDULAM)さん(モンゴル)に奨学金(100万円)を支給した。

また、超伝導製造技術とナノテクノロジーを駆使した超電導新物質の研究などの室温超伝導を念頭においた新しい研究動向を調査し将来方向性を見出すために組織される「RTS研究会」(発起人代表内田慎一先生)から立ち上げ時期の活動資金の一部を助成してほしいという要請があり、50万円を助成した。

3. 調査事業

(1) 事例調査

世界をリードした半導体共同研究プロジェクトの調査の終了と出版

平成18年度から行ってきた半導体共同研究プロジェクトの調査を終了し、工業調査会から『世界をリードする半導体共同研究プロジェクト』として平成20年12月に出版した。調査した対象プロジェクトは以下のとおりである。

超エルエスアイ技術研究組合共同研究所 (略 超LSI共同研究所)
SEMATECH
IMEC vzw
Albany NanoTech
あすか(ASUKA)プロジェクト
株式会社 半導体先端テクノロジーズ(Selete)
株式会社 半導体理工学研究センター(STARC)
株式会社 先端SoC基盤技術開発(ASPLA)
技術研究組合 超先端電子技術開発機構(ASET)
半導体MIRAIプロジェクト
高効率次世代半導体製造システム技術開発(HALCA)プロジェクト
21世紀型顧客ニーズ瞬時製品化対応新生産方式の創出(DIIN)プロジェクト
技術研究組合 極端紫外線露光システム技術開発機構(EUVA)

編者の垂井常任理事の以下のような意図が体現できた書籍となった。「最近の半導体関係の共同研究プロジェクトは、洋の東西を問わず、複数の会社からの出向者を集めたものが多く、それがほぼ常識化されて来ている。このような共同研究の源泉をたどると1976年から1980年に行われた通産プロジェクトの超LSI共同研究所に行き着く。超LSI共同研究所は世界初の新しい手法の開発ということから、アントレプレナーシップの発揮と言えよう。さらに、超LSI共同研究所の試みは、欧米に於ける研究にも影響を与え、米国におけるSEMATECH、欧州に於けるIMECなどの世界の共同研究の潮流となった。

この調査では、原点に戻って、超LSI共同研究所とそれ以降の主な共同研究プロジェクトをレビューし、超LSI共同研究所において掲げられた"基礎的共通的"な考え方の与えた効果を考え、それがその後の共同研究にどのように生かされて来たか、生かされていないかを調べ、今後のプロジェクトの参考に供したい。」

『Semiconductor FPD World』や『電子材料』に書評が載せられた。また、本の内容をもとにしたセミナーをプレスジャーナル主催で3月に開催した。

(2) TTM

調査事業と普及事業を行う財団スタッフの力量を向上させるための勉強会として、毎週1回火曜日に実施した。自分が関心をもったテーマについて調査したものを説明し、全員で討論を行った。財団の活動方針や、武田シンポジウムの企画についてもこのミーティングで討論した。添付資料の通り合計47回実施した。

そのうち、外部講師によるTTMを2回、今年度の奨学生のツェツェドグラムさんを講師としたTTMを1回、サイエンスコミュニケータ養成講座の受講生を講師とするTTMを2回開催した。

開催日、担当、タイトルは添付資料のとおりである。

4. 普及事業

(1) 武田シンポジウム

武田計測先端知財団主催により平成21年1月31日、東京大学武田先端知ビル武田ホールで「共に生きる知恵」をテーマに武田シンポジウムを開催した。微生物、人間、情報ネットにおける共生などをテーマに3名の講師による講演と総合質疑を行った。

大島泰郎東京工業大学名誉教授が、「共に生きる微生物」と題する講演を行なった。遺伝子に基礎を置いて3グループに生物を分類する話から、人の常在菌や腸内細菌の話まで、幅広い講演を行い、「微生物に頼って裏切られたことはない」と述べて講演を終わった。

続いて、長谷川眞理子総合研究大学院教授が「人は共同繁殖」と題する講演を行った。ヒトは大きな脳をもっており、ヒトの子育ては母親だけで行うのは無理で、父親、祖父母を始め様々な人間がかかわっており、ヒトは「共同繁殖」である。また、ヒトは子育てのみを共同で行っているのではなく、食料を得ることや生きていくことのすべてが共同作業である、これほど緊密な共同作業を行って生きている生物は他には存在しない、ヒトが繁殖期間を終わってから長く生きるのはそのためであると述べて講演を終わった。

最後に中村達生(株)創知社長が、「情報ネットが作る新しい知」と題する講演を行った。現在のインターネットの検索は必ずしも、欲しい情報を優先的に探し出してくれるわけではない。情報を俯瞰的に見る手段が必要である。情報に含まれる単語を超多次元空間で表現し、その超多次元空間でのそれぞれの情報をベクトルで表し、その距離を計算して2次元空間に表示することによって俯瞰的な検索が可能であり、特許情報に応用した実例を説明する講演を行った。

最後に財団唐津理事が司会をして、総合質疑を行った。28のCanonical Milestonesを対数表示したグラフ上に3つの講演の内容は当てはめることが出来るということを説明したあと、質疑を行った。コンピュータが進歩しても、38億年の歴史を持つ人間の脳にはかなわないだろうという長谷川眞理子先生の言葉で締めくくりとなった。

参加者は約250名、アンケート回答者は158名であった。タイトルから予想していたよりも分かりやすく興味深かったというコメントもあった。

(2) カフェ・デ・サイエンス

平成17年度から始めたカフェ・デ・サイエンスを今年度も実施した。「普通の人たちが、専門用語で独特の概念について議論することになれてしまっている科学者と一緒に、日常的な言葉と具体的なイメージで科学を語り、それによって、科学の知識を得ようというのではなく、物事を科学的に考えるとは、どういうことなのかを体得する場とする。」ことを基本的な考え方とした。

第20回からは、会場を新宿のギャラリー円月から目黒のギャラリーコスモスに変更し、月曜日の夜に開催した。大島泰郎さんをメインゲストにして、「異端児の見る生命」と題して5回実施した。テーマと講師は以下の通りであった。

第19回 「異端児のみる生命 工学の知・生命の知」(平成20年5月31日)
講師: 大島泰郎さん(東京工業大学名誉教授)
    榊 佳之さん(東京大学名誉教授)
第20回 「異端児のみる生命 雄と雌をめぐる謎」(平成20年7月28日)
講師: 大島泰郎さん(東京工業大学名誉教授)
    長谷川 眞理子さん(総合研究大学院大学教授)
第21回 「異端児のみる生命 微生物と共に生きる」(平成20年11月10日)
講師: 大島泰郎さん(東京工業大学名誉教授)
    矢木 修身さん(日本大学大学院教授)
第22回 「異端児のみる生命 生物時計」(平成20年12月22日)
講師: 大島泰郎さん(東京工業大学名誉教授)
    川戸 佳さん(東京大学大学院教授)
第23回 「異端児のみる生命 タンパク質の品質管理」(平成21年3月23日)
講師: 大島泰郎さん(東京工業大学名誉教授)
    永田 和宏さん(京都大学教授)

関心の高いテーマであり、多数の申込が毎回あった。申込が100名に達することもあった。締め切り間際に新しい参加者の申込が多くあることも考慮し、参加者の幅を広げたいという願いもあったので、第13回から第15回までは抽選で参加者を決定した。

その後は、定員に達したら申込受付を締め切る方式にした。毎回50から60人程度の参加者にしぼり、40人から45人が実際に参加した。

(3) 広報・出版

① 財団ホームページ更新

武田シンポジウム2009およびカフェ・デ・サイエンスの内容を掲載したホームページの更新を行った。

② 武田シンポジウム2008の出版

平成19年2月に開催した武田シンポジウム「豊かな未来に向けての選択」 の内容をもとにして武田計測先端知財団編 中西準子、武田穣、福田恵温、唐津治夢著 『選択 -リスクとどう付き合うか-』を平成21年1月に出版した。出版社はケイ・ディー・ネオブックス、販売は(株)化学同人である。

4. 事務局報告

▼新法下の財団への移行

平成21年2月6日に内閣府に移行認可申請を行った。申請内容の修正の指摘があり、平成20年度中には認可にならず、平成21年の中頃に認可の見込み。修正内容については、別議案一般財団法人への移行認可申請で審議頂く。

▼評議員会・理事会関係

第25回理事会(平成20年5月20日(火)午前10時00分~12時00分)

於:財団事務所
議案1) 平成19年度事業報告・収支決算承認の件
議案2) 公益法人制度改革による新制度への移行準備の件

第18回評議員会(平成20年6月2日(月)~6月9日(月))

於:書面開催
議案1) 平成19年度事業報告・収支決算承認の件
議案2) 公益法人制度改革による新制度への移行準備の件

第26回理事会(平成20年11月28日(金)午後3時00分~5時00分)

於:財団事務所
議案1) 財団法人武田計測先端知財団における最初の評議員の選任方法
議案2) 評議員選定委員会の外部委員の選任
議案3) 評議員選定委員会の現行寄付行為上の評議員1名の選定委員の選任
議案4) 新法下の法人への移行方針

第27回理事会(平成20年12月15日(月)午前11時30分~午後13時30分)

於:財団事務所
議案1) 最初の評議員選任方法の修正
議案2) 最初の評議員候補の推薦
議案3) 平成20年度事業計画と収支予算の改訂
議案4) 寄付行為の変更案の審議
議案5) 一般財団法人への移行認定申請書の審議

第19回評議員会(平成20年12月25日(木)~平成20年 12月29日(月))

於:書面開催
議案1) 最初の評議員選任方法の審議
議案2) 平成20年度事業計画と収支予算の改訂
議案3) 寄附行為の変更案の審議
議案4) 一般財団法人への移行認定申請書の審議

第28回理事会(平成21年1月14日(水)~ 1月16日(金))

於:書面開催
議案1) 寄附行為の変更
議案2) 平成20年度奨学生の選考

第29回理事会(平成21年2月24日(火)午後3時~午後5時)

財団事務所
議案 平成21年度事業計画と収支予算

第20回評議員会(平成21年3月5日(木)~3月9日(月))

於:書面開催
議案1) 理事監事の選任
議案2) 平成21年度事業計画と収支予算

経済産業省の立ち入り検査(平成21年3月26日)

3年に1回実施する立ち入り検査である。
検査官 谷 浩、経済産業省情報通信機器課 環境リサイクル室 課長補佐
村田 宇弘、経済産業省情報通信機器課


▼経理関連

内部監査

期中監査実施(平成20年7月30日・11月10日・平成21年1月21日・3月18日・4月9日)

和田公認会計士事務所:和田公認会計士
財団立会者:赤城・高見


添付資料

月  日担  当タイトル人数
4月1日赤城さん世界は今11
4月8日溝渕さん空気と戦争9
4月15日姥澤さんSunshine Vitamin11
4月22日三井さんインフルエンザ ワクチン10
5月13日全員来年シンポⅠ10
5月20日羽田野さん排出権取引を巡る最近の話題10
5月27日禿さんディスプレイ技術の現状11
6月2日相崎さん特許審査の仕事8
6月10日赤城さんLinux World Expo 2008他10
6月17日全員 来年シンポ Ⅱ11
6月24日溝渕さん太陽光エネルギー「光合成」10
7月1日鴨志田さん幹細胞関連技術特許・文献動向調査の紹介9
7月8日姥澤さんあなたの未来を知りたいですか10
7月15日玉地さん
(伊藤忠テクノ)
Open Universe―2025年の未来11
7月22日全員来年シンポ Ⅲ9
7月29日三井さん生命の知と工学の知10
8月5日羽田野さんピークオイル11
8月19日全員来年シンポ Ⅳ9
8月26日禿さん地雷除去に挑む雨宮清氏11
9月2日相崎さんダビング10、iTune、著作権法11
9月9日赤城さん関係のない3つの話(自宅太陽電池、
CER最高速陽子衝突実験など)
10
9月16日全員来年シンポ Ⅴ(三人目の講演者の検討)12
9月30日全員来年シンポ Ⅵ(三人目の具体的な講演者の検討)12
10月7日溝渕さん生命の知、工学の知、アフター11
10月14日姥澤さん自然免疫を表舞台にだしたTOLL様受容体9
10月21日鴨志田さん農業と半導体産業の連携11
10月28日全員来年シンポ Ⅶ11
11月4日三井さん雄と雌をめぐる話(競争と協力と葛藤)11
11月12日禿さん脳は死ぬまで成長する10
11月18日内藤さん
(産総研)
サービス工学&サステナ ビリティ11
11月25日全員来年シンポ Ⅷ・新法財団移行計画説明会11
12月2日羽田野さん人間の知・人は何を作ってきたのか(モンゴル帝国) 10
12月9日全員来年シンポ Ⅸ・新法財団移行計画説明会Ⅱ11
12月16日禿さんFPDインターナショナル紹介11
1月6日相崎さんカーボンナノチューブ(CNT)の最近の応用展開10
1月13日赤城さんバブルと脳と生活者11
1月20日全員シンポ準備(講師スライド紹介)10
1月27日溝渕さん有機太陽電池の最近の動向11
2月3日全員シンポ反省会9
2月10日鴨志田さん2020年の自動車産業(IBMの調査論文)11
2月17日蓑田裕美さん
(東大修士)
修士論文(イネの抵抗性)の紹介10
2月24日全員16-17時 来年度財団の進め方(理事会先生同席)14
3月3日ツェツェグさん
(奨学生)
モンゴルの全体的な紹介から教育、環境分野について11
3月10日全員シンポ反省会 Ⅱ(アンケート結果)14
3月17日岩崎さん
(日本獣医生命科学大学)
修士論文の紹介10
3月24日姥澤さん生命の建築様式11
3月31日全員武田シンポⅠ11