年度計画・報告  Annual Report


一般財団法人 武田計測先端知財団 平成21年度事業報告

(平成21年12月1日から平成22年3月31日まで)


一般財団法人武田計測先端知財団定款附則2により、特例民法法人の解散と一般財団法人の設立の登記を行ったときは、解散の登記の日を事業年度の末日とし、設立の登記の日を事業年度の開始日とすることが定められている。この附則2に従って平成21年4月1日から11月30日までを特例民法法人平成21年度とし、平成21年12月1日から平成22年3月31日までを一般財団法人平成21年度とする。本議案は、一般財団平成21年度の事業計画である。


1. 顕彰事業

継続事業1 研究開発者顕彰事業

第10回バイオビジネスコンペJapanに協賛して、バイオ先端知賞を提供した。2月10日の選考委員会で「糖鎖プライマー法を用いた細胞に発現する糖鎖マーカーの探索と医薬品開発への応用」というテーマで慶應義塾大学理工学部の佐藤智典教授が選考された。糖鎖の解析に使う技術で、糖鎖のはじまりになるプライマーを細胞中に入れると、細胞中の成分と反応して糖鎖を生成する。プライマーの種類を変え、細胞の種類を変えるといろいろな糖鎖ができる技術である。プライマーをいくつか持っているので、細胞が合成できるあらゆるオリゴ糖鎖を作ることが可能である。発展していけば、抗体作成、診断や創薬にも使える技術である。

3月11日に大阪市のブリーゼプラザ7階 小ホールで授賞式が行われ、財団専務理事の赤城が賞のプレゼンターとして出席した。

2. 助成事業

継続事業2 奨学金の給付

特例民法法人平成21年度第32回理事会において選考されたモンゴルから政策研究大学院大学に留学しているウラムバヤル・ツェツェグドラム(Ulambayar TSETSEGDULAM)さんに後期の奨学金50万円を3月に支給した。財団のTTMでモンゴルについてのプレゼンテーションを行うのは、本人の都合により平成22年度6月とした。

3. 調査事業

継続事業3 先端科学技術等の調査事業

(1) アントレプレナーの調査と出版

生活者のためのイノベータ列伝

平成15年度からアントレプレナーの調査を行ってきた。平成21年度では、第4次調査として、最近大きな成果を上げ、生活者に富と豊かさ・幸せをもたらした10人のアントレプレナーに関する調査を行った。10人のうち2人については調査を完了した。残り8人については、財団としての調査は終了し、調査対象者に事実関係などの確認を依頼した。確認が取れ次第、平成22年度において、ホームページ上で調査報告書を公開し、書籍として刊行する。

調査対象としたのは、以下のイノベータである。タイトルは、調査の結果変更する場合がある。

岩田 聡「Wii」,「DS」を世に出したこと  任天堂社長
嶋 正利マイコン開発者の一人&ダイナミックコンフィギユアラブル技術 マイクロプロセッサー・アーキテクト
伊賀 章ソニーFelica の開発者  ソニー情報技術研究所長
森 健一日本語ワープロの開発者  東京理科大教授
越智 成之CCDの実用化  ソニーテクニカルアドバイザー
岩崎 俊一垂直磁気記録による高密度情報ストアレッジ技術  東北工業大学理事長
宮崎 照宣トンネル磁気抵抗効果(TMR)の発見  原子分子材料科学高等研究機構
神原 秀記ゲノム解読分析器の開発  日立中研フェロー
谷岡 健吉超高感度HARP方式撮像管の発明と高性能化  元NHK技研所長
千本 倖生第二電電初めベンチャー育成  イーアクセス会長兼CEO

(2) 科学技術の国際連携戦略研究会

日本政府の第4次科学技術基本計画の国際連携戦略について政策提言することを目的に特例民法法人平成21年度の調査活動の一つとして7月から研究会を発足させた。委員は、有本建男(科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター長)、足立直樹(株式会社レスポンスアビリティ代表取締役)、小林信一(筑波大学ビジネス研究科教授)、末森 満(国際協力機構(JICA)上級審議役)、鈴木達治郎(電力中央研究所社会経済研究所研究参事)、角南 篤(政策研究大学院大学准教授)、渡辺 孝(芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科長・教授)の7名であった。

平成21年12月に中間報告をまとめ、ホームページ上で日本語版と英語版を公開すると同時に、日本語版と英語版を小冊子として印刷し、政策提言として総合科学技術会議の相澤益男議員、白石隆議員を含む各界の影響力のある人に配布し説明した。

この提言を政府関係機関、研究開発助成機関、国際連携機関、民間団体や企業、一般の人々、アジア各国を始めとする外国政府や民間機関などに広く理解頂き、意見やコメントを貰うために、「科学技術の国際連携戦略シンポジウム -アジア研究圏の創設に向けて-」の開催を計画した。基調講演を総合科学技術会議の白石隆議員にお願いし、政策提言について、有本座長、小林委員、渡辺委員が説明し、その後、日本、中国、韓国、ASEAN、EU、米国などからのパネリストによるパネル討論等のプログラムを作成し、5月12日に政策大学院大学において、シンポジウムを開催することとし、その準備活動を行った。

(3) TTM (Takeda Tea Meeting)

財団スタッフを中心に、財団理事にも参加いただいて、毎週火曜日に開催した。12月15日には、武田シンポジウムの講師である、大隅先生にお話しをして頂くTTMを実施した。資料にテーマ一覧を添付した。

4. 普及事業Ⅰ

継続事業4 武田シンポジム等のシンポジウムや講演会の企画・実施・内容の公開事業

(1) 武田シンポジウム

2月6日に、「脳と社会」をテーマとする武田シンポジウムを開催した。川人光男(ATR脳情報研究所所長)先生による「医療BMIから脳コミュニケーションまで」、大隅典子(東北大学大学院医学系研究科教授)先生による「いくつになっても神経細胞はつくられる! -神経幹細胞を活性化するには-」、山岸俊男(北海道大学大学院文学研究科教授)先生による「脳研究と社会科学」の3つの講演のあと、唐津治夢理事が司会をして総合質疑を行った。BMIが非常に速いペースで進歩していることに驚いたり、また脳神経細胞がいくつになっても作られることに希望の光を見いだしたり、20世紀の社会科学に対する根源的な問いかけに共感したり、幅広い内容のシンポジウムであった。

会場の制約から参加申し込み数が360人を超えた時点で参加申し込みを締め切った。当日直接会場に来た人もあり、最終的には367人の参加申込、266人の出席となった。シンポジウム終了後山上会館で懇親会を行った。今年は、講師の関係者、メディアの人なども招待し、59人が参加した。参加者にアンケートを記入して貰ったが、回答してくれた人は152人であった。アンケートの結果はおおむね好評であり、一部の項目で評価が分れていた。

(2) 武田シンポジウムの内容を元にした書籍の出版

シンポジウムの内容を書籍として刊行するためにテープ起こしをした原稿から、書籍用の原稿を作成する作業を行った。今回は、講演者の講演内容だけでなく、参加者にも感想やコメントの原稿執筆を依頼し、第5章として刊行する。8名の方の原稿を掲載する。平成22年5月をめどに全体の原稿を作成し、書籍の刊行に入る予定である。ケイ・ディ・ネオブックに書籍の刊行を依頼し、化学同人社から発売する。

5. 普及事業Ⅱ

継続事業5 サイエンスカフェの企画・開催・内容の公開事業

(1) カフェ・デ・サイエンスの実施

「普通の人たちが、専門用語で独特の概念について議論することになれてしまっている科学者と一緒に、日常的な言葉と具体的なイメージで科学を語り、それによって、科学の知識を得ようというのではなく、物事を科学的に考えるとは、どういうことなのかを体得する場とする。」ことを基本的な考え方としたカフェ・デ・サイエンスを2回開催した。大島泰郎さんにメインゲストをお願いした。

第27回は、長瀧 重信さん(長崎大学名誉教授)をゲストに迎え、「異端児のみる生命 放射線の影響」をテーマに開催した。放射能の影響について、疫学的に影響が認められることと、疫学的に認められないとしても関係が疑われることなどの微妙な領域のテーマであったので、開催後の感想では、賛否両論があった。開催後財団のTTMでもこのカフェサイの内容と反応について議論をした。財団としては、このようなテーマを避けるのではなく、学問的に確立されていること、学問的に否定されていること、その中間のことを冷静に区別しながら、このようなテーマも取り上げてゆくことにした。

第28回は、林 利彦さん(帝京平成大学薬学部教授)と福井寛さん(資生堂を退職後福井技術士事務所所長)をゲストに迎え「異端児のみる生命 粧う(よそおう)」をテーマに開催した。化粧品とコラーゲンが話の中心であったが、派手なイメージのある化粧品の世界も非常に地味な研究者が丁寧な実験をしてしっかりしたデータを出していることで支えられていることに驚く人が多かった。コラーゲンの有効利用については、日本で研究をやったものが、なかなか商品化が認められず、外国で商品化されると認められるという状況にある話などがあった。

(2) ウィークエンド・カフェ・デ・サイエンスの開催支援

科学博物館が行っている「サイエンスコミュニケータ養成実践講座」の修了生が中心となってウィークエンド・カフェ・デ・サイエンスを行いたいという動きがあり、財団として共催の形で支援した。ホームページへの掲載、参加申し込みの受信、打合せ場所の提供、講師謝礼、会場費などを負担し、必要な助言を行うなどの支援を行った。

一般財団法人平成21年度では、平成22年4月24日開催の「菌類カフェ」と5月29日開催の「温暖化カフェ」の開催準備の支援を行った。菌類カフェは科学博物館の後援、温暖化カフェは科学博物館との共催で行う。

6. 広報など

(1) 財団ホームページ更新

一般財団法人平成21年度事業計画書と収支予算書をホームページに掲載して公開した。科学技術の国際連携戦略研究会の政策提言をホームページに掲載した。

7. 公益目的支出計画

特例民法法人平成21年度の決算に基づいて公益目的財産額の確定を行った。確定した金額は221,616,593円である。

8. 総務関係

業務委託契約

和田公認会計士事務所とは、会計処理帳票の作成及び決算書類の作成とそのためのサポートの業務を委託する業務委託契約を締結した。


資料 一般財団法人平成21年度TTMテーマ一覧

月  日担  当タイトル人数
12月1日三井さんミドルワールド11
12月8日運営会メンバー
TTM休み
財団運営会①5
12月15日
10:30-12:00
大隅典子先生
(東北大学)
脳細胞の科学14
12月22日羽田野さんエイモリーロビンスの提言と
低炭素経済社会への道のり
12
1月5日相崎さんFeliCaは世界で勝てるか10
1月12日赤城さん財団から発信したメッセージ ケーススタディ11
1月19日溝渕生命の知、工学の知 その310
1月26日鴨志田さんCCD事業化(ソニー越智氏)11
2月2日全員シンポ 事前確認12
2月9日運営会メンバー
TTM休み
財団運営会②4
2月15日(月)全員シンポ 反省会Ⅰ11
2月23日大戸さん科学技術の国際連携戦略シンポジウム開催について11
3月2日禿さん一流の思考法12
3月9日全員シンポ アンケート整理/アジア研究圏パンフ12
3月17日(水)姥澤さんBrain's Dark Energy12
3月23日三井さん粧う12
3月30日全員来年のシンポ①12