年度計画・報告  Annual Report


一般財団法人 武田計測先端知財団 平成24年度事業報告

(平成24年4月1日から平成25年3月31日まで)


1. 顕彰事業

継続事業1 研究開発者顕彰事業

平成23年度に続いて、大阪商工会議所と大阪医薬品協会が主催するバイオビジネスアワードJapanに国際社会の健全な発展と人類の豊かさ・幸福への寄与が期待されるバイオ技術にたいする賞として「バイオ先端知賞」を提供した。

2月15日に大阪産業創造館で本選会が行なわれた。「中枢神経系疾患」、「アレルギー・免疫・炎症性疾患」、「消化器・泌尿器疾患」、「代謝・循環器疾患/感染症」及び「がん」の5領域より各1件ずつ(合計5件)の発表が行なわれ、「TGF-βシグナル伝達経路を創薬標的とした新しい臓器繊維化抑制剤の開発」で京都大学大学院薬学研究科教授の掛谷秀昭先生がバイオ先端知賞に選考された。

平成25年度からは、選考業務を財団スタッフと財団が依嘱する選考委員で行ない、顕彰対象を若手の研究者とする賞に変更するための検討を行い、平成25年度事業計画にTakeda Young Entrepreneurship Award(仮称)として盛り込んだ。


2. 助成事業

継続事業2 奨学金の給付

平成23年度の奨学生に選考したPANDEYさんが平成24年度も山梨大学でポスドク研究員として研究を続けており、指導教官の風間ふたば先生からの推薦も頂いたので、第8回理事会で平成24年度の若手優秀研究者として選考し、奨学金100万円を支給した。

平成25年度からは、継続事業1のTakeda Young Entrepreneurship Award(仮称)への応募者から奨学金給付者を選考することとし平成25年度計画に盛り込んだ。


3. 調査事業

継続事業3 先端科学技術等の調査事業

3.1. アントレプレナーの調査と出版

アントレプレナーの第5次調査を終了し『世界を先駆ける日本のイノベーター』としてオーム社から1月25日に刊行した。調査テーマは以下の通りであった。「量子ドットデバイスの提案と実現」(荒川泰彦 東京大学生産技術研究所教授)、「リチウムイオン電池の基本構造を確立」(吉野彰 旭化成株式会社フェロー・理事・吉野研究室室長)、「デジタルカメラの手振れ補正技術などの発明」(大嶋光昭 パナソニックR&D部門顧問)、「三次元デバイスを可能にするTSV技術の先駆的研究」(小柳光正 東北大学未来科学技術共同研究センター教授)、「酸化亜鉛発光ダイオードおよび新規デバイスの創出」(川﨑雅司 東京大学大学院工学研究科量子相エレクトロニクス研究センター教授)、「IGZO薄膜半導体、鉄系高温超伝導体など新規材料の創出」(細野秀雄 東京工業大学応用セラミックス研究所教授)、「チタン-ニッケル形状記憶合金の研究開発と実用化への貢献」(宮崎修一 筑波大学大学院数理物質科学研究科教授)、「独創的な暗号解読法を駆使して携帯電話用世界標準暗号を開発」(松井 充 三菱電機株式会社情報技術総合技術研究所情報セキュリティ技術部長)。

3.2. 科学技術の国際連携戦略研究会

平成21年度において、当財団が組織した「科学技術の国際戦略研究会」は、日本とアジアとの科学技連携戦略として、「アジア研究圏」構想を日本政府に政策提言したが、その後も政策提言だけではなく、広く世界やアジアの生活者が豊かになるような動きを推進するために、国際政策対話に関する連絡会やアジアについての勉強会を開催している。平成24年度も、連絡会を開催し、アジアにおける科学技術連携を有効に進めるべく議論を行った。また、国際政策対話の実施に当っては、国際政策対話の参加者の交流を深めるための懇親会を開催した。また、「アジアについての勉強会」では、元日本経済新聞社副社長の牧久氏に日本とベトナムとの交流について、国際開発ジャーナル主幹の荒木光弥氏に日本とタイとの科学技術交流について話を伺った。

3.3. TTM(Takeda Tea Meeting)

毎週財団スタッフによるミーティングを開催した。財団スタッフが関心を持ったテーマについて説明し、討論を行った。また、武田シンポジウムのテーマ設定のための議論もこのミーティングで行った。

平成24年度のテーマ一覧を最後に添付した。


4.普及事業Ⅰ

継続事業4 武田シンポジウム等のシンポジウムや講演会の企画・実施・内容の公開事業

4.1 武田シンポジウム

武田シンポジウム2013を全体テーマ「つくって理解 細胞から宇宙まで」を2月9日に開催した。個別のテーマと講師は、「細胞シート再生医療の実現・普及」(岡野光夫 東京女子医科大学副学長・先端生命医科学研究所所長)、「生命・細胞をつくる」(木賀大介 東京工業大学大学院総合理工学研究科准教授)、「最高エネルギー加速器で宇宙の始まりにせまる」(小林富雄 東京大学素粒子物理国際研究センター教授)であった。

354名の参加申込数があった。今年から、参加申込者の年代を記入して貰った。60代の参加申込数が一番多いが、20代30代の若い層の申込も41名あった。

シンポジウム終了後、武田ホール横のホワイエで講師を囲むレセプションを行なった。参加費無料で参加者全員に参加を呼びかけ、約100名に参加があった。

これまでの財団活動を参加者に理解して頂くために、昨年までに財団から出版した書籍を希望者に無償提供した。合計459冊を配布することができた。

5. 普及事業Ⅱ

継続事業5 サイエンスカフェの企画・開催・内容の公開事業

5.1. カフェ・デ・サイエンス

細矢 治夫さん(お茶の水女子大学名誉教授 パズル懇話会会長)をゲストにして、「化学×数学」を4月16日、6月25日、9月3日の3回開催した。

その後、織田 幸孝さん(東京大学大学院数理科学研究科教授)をゲストに「生活世界の数学」を、12月と2月に開催した。第1回は「数学で心臓を解析できるか」第2回は「社会ネットワークと複雑現象の数理」をテーマにした。内容は、財団ホームページに掲載している。

5.2.ウィークエンド・カフェ・デ・サイエンス

科学博物館のサイエンスコミュニケータ養成講座修了生の有志を中心として財団と共催で開催している。財団は、運営資金の提供と毎月の定例会での議論への参加を主な支援として行なっている。平成24年度は8回開催した。これ以外に11月のサイエンスアゴラでは、シンポジウム「科学・技術広報って? ~体験談からキャリアパスまで~」を開催した。内容は、財団ホームページとWEcafeブログで公開している。


6.調査事業Ⅱ

「アジアの科学技術連携についての国際政策対話2012」を文部科学省の科学技術戦略推進費補助金「科学技術外交の展開に資する国際政策対話」プログラムに応募し、採択された。ワークショップと公開シンポジウムを、政策研究大学院大学(GRIPS) において10月19、20日に開催した。共催団体は、GRIPS、日本工学アカデミー、JICA、本田財団、研究産業・産業技術振興協会であり、文部科学省、内閣府、経済産業省、外務省の後援を得た。本国際政策対話は、民間団体による国際政策対話であり、日本のアジアに対する域内連携のプログラムや活動を紹介し、日本政府が推進する「東アジア・サイエンス&イノベーション・エリア(e-アジア)」構想に対するアジア諸国の理解を促進することを目的としている。インド、バングラディシュ、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ベトナム、タイ、フィリピン、韓国の9か国の科学技術コミュニティの代表者や在日の中国、タイ、欧州、米国の有識者21名を招へいし、日本側の参加者20名が加わって開催した。オブザーバーを含めたワークショップの参加者は、2日間で延べ105名、国際シンポジウム参加者は132名だった。継続事業3の調査事業と有機的に連携して実施した。


7. 寄付金

(株)エー・アンド・デイ社から賛助会費100口(1口10万円)1千万円の寄付を頂いた。


8.広報関係

平成23年度事業報告、決算書、武田シンポジウム・国際政策対話やカフェ・デ・サイエンスの参加者募集、討論内容、などを財団ホームページに随時掲載した。


9. 総務関係

和田公認会計士事務所と業務委託契約を結んだ。


10. 理事と理事長などの選任

第7回評議員会で理事9名を選任した。前理事長武田郁夫の逝去に伴い、第9回理事会において新理事長など役付き理事を選任した。また、財団運営体制を強化するため、第8回評議員会で理事1名を選任した。その結果財団役員は以下の通りとなった。

理事長 唐津治夢
専務理事 大戸範雄(昇任)
常任理事 鈴木基之
  垂井康夫
  松原謙一
理事・事務局長 赤城三男
理事 西村吉雄
  竹下晋平(新任)
  溝渕裕三(再任)
監事 辰野守彦
  武田真理子(新任)

11.財団事務所の移転

平成25年4月1日付で財団事務所を東京大学武田先端知ビル(東京都文京区弥生2-11-16)に移転することが第10回理事会で決まり、東京大学との契約を締結した。


12. 公益目的支出計画の実施報告

一般財団法人平成23年度の事業報告と決算に基づいて平成23年度の公益目的支出計画実施報告書を公益認定等委員会に提出した。平成23年度末の公益目的財産残額は114,608,953円となった。

平成24年度については、事業報告と決算に基づいて実施報告を行う。当初の計画金額と実施結果の金額の差については以下のように説明する。

 計画実績実績-計画 
継1 研究開発
者顕彰事業
\1,180,948\1,228,160\47,212計画通りの事業を行ったが、
軽微な金額の差異が生じた。
実施期間の変更はない。
継2 奨学金給
\1,154,448\1,250,000\95,552計画通りの事業を行ったが、
軽微な金額の差異が生じた。
実施期間の変更はない。
継3 先端科学
技術等の調
査事業
\16,715,603\11,127,093\-,5,588,510調査事業の内アントレプレナ
ー調査については、第5次調
査の出版後調査を一時休止し
たため。実施期間の変更はな
い。
継4 武田シンポ
ジウム等のシン
ポジウムや講演
会の企画・実施
・内容の公開
事業
\9,231,466\7,071,855\-2,159,611企画業務・懇親会などの経費
削減に努めたため。実施期間
の変更はない。
継5 サイエンス
カフェの企画・
開催・内容の公
開事業
\3,835,690\3,692,431\-143,259計画通りの事業を行ったが、
軽微な金額の差異が生じた。
実施期間の変更はない。
事業共通費\8,079,393\7,041,371\-1,038,022経費削減に努めたため。
実施期間の変更はない。



添付資料 平成24年度TTMテーマ一覧

月 日担 当タイトル人数
2012年
4月10日
禿2012年の経済予測9
4月17日溝渕ゲーミフィケーション9
4月24日赤城-全員来年のシンポ(1)11
5月8日倉又氏(三省堂)新彊ウイグル自治区への旅行11
5月15日鴨志田バイオナノテクノロジーの話9
5月22日姥澤DNA Sequencer after10
5月30日全員来年のシンポ(2)10
6月5日三井インフルエンザ研究論文の公開を巡って11
6月12日内藤氏(産総研)サービス産業の果たすべき役割12
6月19日赤城タックスヘイブンの闇10
6月27日牧久氏(元日経副社長)ベトナム独立を支援した日本人―日越交流の百年25
7月3日大戸国際政策対話2012 ①10
7月24日全員来年のシンポ(3)11
7月31日相崎シェールガス、シェールオイルの光と陰9
8月14日溝渕円高・デフレを考える10
8月22日荒木光弥氏(国際開発
ジャーナル主幹)
フ対ASEAN知的ネットワークづくり」
~東南アジアODAアセット調査から~
26
8月28日全員財団の進め方(1)・来年のシンポ(4)12
9月4日鴨志田大気圧プラズマー表面改質から医療応用までー11
9月11日全員財団の進め方(2)・来年のシンポ(5)13
9月18日禿邪馬台国を求めて11
9月25日姥澤パーソナルゲノム事情12
10月2日三井自閉症14
10月9日全員財団の進め方(3)・来年のシンポ(6)15
10月16日大戸・全員政策対話12
10月23日赤城市場の矯正11
10月30日西村先生「電子情報通信分野の総合的産業史」プレゼン
&ディスカッション
12
11月6日小林富雄先生(東大)宇宙を創る(CERN)14
11月13日全員来年のシンポ(7)15
11月20日大戸・全員財団の進め方(4)・国際政策対話2012反省会16
11月27日倉又氏(三省堂)日本の理科教育13
12月4日相崎PCウイルスの動向と対策(遠隔操作ウイルスと
誤認逮捕など)
12
12月11日全員来年のシンポ(8)11
12月18日木賀先生(東工大)生命を創る13
12月25日西村先生・全員武田財団ミッションステートメント検討会、
終了後年末懇親会(自由参加)
13
2013年
1月8日
溝渕ヒッグス粒子を理解する12
1月15日鴨志田X線写真デジタル化に貢献したイノベーションと
現代のX線画像解析
11
1月22日禿創立100年企業 シャープに何が起きたのか12
1月29日姥澤去年・今年に注目されている科学技術の話題
(生命系応用分野を中心に)
13
2月5日赤城ふたたび Google12
2月12日西村先生人口問題16
2月19日三井いまさらダーウィン12
2月26日全員シンポアンケート整理・反省会11
3月5日大戸家族構造と社会10
3月12日相崎テレビ・携帯電話の最近の動向10
3月19日溝渕バイオマスを考える11