3.ゲノム研究の社会に与えた影響
   セレラ社によるヒトゲノムDNA塩基配列決定は、大量情報の集中的収集と処理を行える全ゲノムショットガン法を適用すれば、ヒトゲノムのような大型ゲノム塩基配列決定を迅速に行えるという工学知を生んだ。また大規模コンピュータの力が生物学にも有用であることを印象づけた。
   HunkapillerとVenterの業績は、公的資金に支えられた従来の研究体制に疑問を投げかけた。ヒトゲノム解析のような大規模基礎研究でも一民間企業が事業として行えるという認識は、ゲノム関連ベンチャー企業の進出を促し、その数は2年間で倍増している(20)。
   高性能DNAシーケンサでのヒトゲノム解読の成功をみた研究者は、他の動物や植物のゲノム解析を進めている。これらは医療や農業に計り知れない成果をもたらす。高性能DNAシーケンサが製品化されたことは、DNAシーケンサだけでなく、DNAあるいはペプチド合成機、ペプチドシーケンサ、質量分析機などのバイオテクノロジー機器関連産業を盛んにした。
   HunkapillerとVenterの業績は、このように、科学および産業界に強いインパクトを与えた。人類の富と豊かさ・幸福との実現に貢献することが期待される。
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