2. 環境負荷の工学的尺度
  Friedrich Schmidt-Bleekは、環境マネジメントに有効な工学的尺度としてエコリュックサックとMIPSを1993年に提唱した(4)。Schmidt-Bleekは、人間が自然から物質的な豊かさを得るために、膨大な量の鉱石、土砂、水その他もろもろの物質を動かすことが環境負荷の本質であると考えた。そして、ある製品が環境に負荷を与える大きさを、自然界で動かした物質の重量で表す尺度として、エコリュックサックとMIPSを考案した。この尺度によって複雑な環境負荷要因を総括的に表すことができる。エコリュックサックとMIPSは再現性のある結果が得られる、有効な工学的尺度であり、工学的創造性に富んだものである。
   Ernst U. von Weizsaeckerは1991年から2000年まで所長を努めていたブッパータール研究所に、エコリュックサックとMIPSを発案したSchmidt-Bleekを招聘した。 von Weizsaeckerの助言により、エコリュックサックとMIPSの概念は、素材中心であったものから、エネルギー効率やvon Weizsaecker自身のテーマである資源生産性との関連性、さらには毒物・有害物等との関連性が明確になり、内容的にも一層充実したものとなった。さらにvon Weizsaeckerは 「ファクター4(5)」」でエコリュックサックおよびMIPSの概念の重要性を紹介し、世界的な普及に貢献した。Schmidt-Bleekとブッパータール研究所は、協力してMIPSの計算に必要な基礎データの蓄積や普及活動を推進している。普及活動の一例として、オーストリアのファクター4+協会と協力して実施した地域の中小企業に対する教育プロジェクト "クラーゲンフルトの革新(6)"が報告されている。
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