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ハピネスを求めて AIエンジン・免疫とがん・民間ロケット -

ハピネスを求めて AIエンジン・免疫とがん・民間ロケット ハピネスは計れるか 
武田シンポジウム2018をもとにした書籍が『ハピネスを求めて AIエンジン・免疫とがん・民間ロケット』として10月30日に丸善から出版されました。Kindl版も近日中に発売予定です。
本書は、生活者のハピネス(豊かさや幸せ)の視点から科学技術や社会の変格を考える『因果関係から相関へ、個別技術からシステムへ』と題した武田シンポジウム2018の内容をまとめたものです。
昨今最も注目を浴びている科学技術である「AI」、「免疫システム研究」、「民間宇宙ロケット」の3つの異なる切り口から、ビッグデータと言われる時代の科学の方法論、個の集積以上の意味をもつシステムとしてのアプローチについて立体的に考察します。

出版社名 丸善プラネット(株)
発行年月 2018年10月
販売価格 1,200円(税別)

 丸善プラネット(株)の紹介ページ
  http://planet.maruzen.co.jp/bookdetail.php?pg=0&id=181102135249

本書の内容

まえがき
 武田計測先端知財団では、世界の生活者の富と幸せを増大させる科学技術の発展の中から、大きなテーマを選び、シンポジウムを開催しています。
 発展する科学技術は、元の領域を超えて多くの分野が互いに関連する複雑なシステムになっています。このような複雑なシステムを、大きな俯瞰的テーマのもとに、さまざまな分野のアプローチを考えることで、多面的な理解を試みようと、企画してきています。
 2018年は、『因果関係から相関へ、個別技術からシステムへ』と題して、科学の新しい方法論、木を見ずに森を観る、といったことを議論しようと思います。
 初めのテーマは、社会をかえていく人工知能 です。実態に合わない神話が先行しやすいAIですが、加速度計で測るハピネスなど、数多くの実施例を積み上げて、ビジネスに適用できるAIの役割、本来の姿が将来の社会にどう関わっていくのかを考えます。
 次のテーマは、老化における免疫システム です。最近の免疫システムの研究により、細胞の老化、個体の老化に免疫が深く関わっていて、がんの理解も大きく進展していきます。こうした生体の複雑な仕組みを考えます。
 三つ目は、民間によるロケット開発です。新しいフロンティアである宇宙は、歴史的に国家機関などの独壇場でしたが、近年各国で民間主導ロケットビジネスへの挑戦が大きな期待を集めています。スーパーカブ並みの超低コスト宇宙輸送ビジネスは何をもたらすシステムを目指すのでしょうか。
 今回の三課題では、個々の因果関係の解明より、ビッグデータと言われるような大きな相関を見出すことにより、事象の解釈や有意さを得ていこうとするアプローチについて掘り下げて議論してみたいと思います。

本書は、この『武田シンポジウム2018』をもとに、三人の講演者に書き下ろしていただいたものです。『ハピネスを求めて』と題して、各先端領域の研究、応用の状況、ビジネスへの展開といったことの将来をまとめました。
第1章では、『人口知能は社会をどうかえるか』として、実例に見るAIの社会への展開を議論します。
第2章では、『免疫システムから考える細胞と個体の老化』として老化・がんと免疫システムの関係を考えます。
第3章では、『民間の開発がロケット産業をつくる』として、民間ロケット開発を展望します。
第4章は、シンポジウムの最後に行われたパネルディスカッションを抄録し、これら三課題が科学の方法論としてどう発展していくかの交路を展望しました。
ものの見方・考え方のより深い理解と洞察の、多面的切り口からのアプローチについて、お楽しみいただければ幸いです。

あとがき
 武田シンポジウム2018の内容をもとにした『ハピネスを求めて AIエンジン・免疫とがん・民間ロケット』をお届けします。
 これからの科学の方向は、因果関係に基づくものから、相関関係に基づくものに変わってゆくのではないかということがシンポジウムを企画する時の考え方でした。さらにシステムとして考えてゆくことが重要だと思い、個別技術からシステムへということも考え方の中に入ってきました。その結果シンポジウムのメインタイトルを『因果関係から相関へ、個別技術からシステムへ』としました
 三人の講師の先生のお話をお聞きしながら、方法論だけでなく、何をするのかを考えることも重要ではないかと思い始めました。今回のシンポジウムの内容をなるべく短い言葉で表したいと思って『ハピネスを求めて』をメインタイトルとし、そのもとで、矢野先生のAIエンジン、湊先生の免疫とがん、稲川社長の民間ロケットをサブタイトルとしました。サブタイトルの順番はハピネスへの近さのようなもので決めました。  
 AIもさまざまな場面で実用的に使われるようになるにつれて、何かわけのわからないもの、人間と対立するものというような理解はだんだん変わってきているのではないかと思いますが、矢野先生のお話しを読んでいただければその思いが一層強くなると思います。  
 免疫は人間や生物がもっている機能として古くから知られていますが、その仕組みがだんだんわかってきました。が、まだわかっていないことも多くあります。免疫の機構ががんなどの疾病の治療に安心して使われる時が早くきてくれることを待ち望んでいます。  
 2018年6月30日のMOMO2号の発射は残念ながら失敗になってしまいました。原因究明、解決策、その確認と手順を踏んでの次の発射実験を楽しみにしています。  
 それぞれの先端技術について楽しんでいただけたら主催者、発行者として望外の喜びです。