「座談会の趣旨」
理事 大戸範雄

  本日の座談会は、産業技術総合研究所理事の請川孝治さんに、 「エネルギー技術開発の考え方」というタイトルでお話していただきます。第一回の座談会は、昨年8月5日に 産業技術総合研究所理事長の吉川弘之先生に第二種基礎研究についてお話していただきました。これが第二回目の座談会ということになります。 この座談会は、財団関係者の勉強の場として設定しております。現在世の中で問題になっていることがらについて財団外の識者の方に講演していただき、 それについて講演者の先生と親しく議論や質問をしてお答えいただくことにより、財団関係者の物を見る目を深め、生活者のためにより効果的な活動 ができるようするということが目的になっております。
   当財団は、情報・電子、生命、環境系という3分野に注目して活動しております。今日の座談会は、エネルギーということで、 生活者のために環境負荷の少ないエネルギー開発は如何にして可能かという視点で、請川さんにお話をお聞きしたいと考えております。 請川さんは、1969年に東大工学部の燃料工学科を卒業されました。実は、私のいた研究室の3年先輩でございまして、私は、4年生からドクター1年まで ご一緒させていただきました。請川さんが出られた燃料工学科というのは、火薬学と化学工学が一緒になってできた学科で、卒業生はエネルギーに様々 な形で関与しています。ここに、1967年に燃料工学科に進学された方々の写真をお見せしていますが、出光興産、宇部興産、日本鉱業、興亜石油、 東京ガスという会社に就職されています。請川さんは、1974年に博士課程を卒業され、工業技術院の公害資源研究所に入られました。 この1970年代というのは、エネルギーと環境にとりましては、実に様々な動きがあった時代です。1972年にはローマクラブによる「成長の限界」 が出版されました。1973年には、第四次中東戦争によるオイルショックが日本を直撃しました。1970年代後半からは、石油に代わるエネルギー源 として石炭や一酸化炭素が注目され、石炭液化研究やC1ケミストリーが産学協同で大々的に始まりました。請川さんはこういう時代に公害資源研 に入り、石炭液化、タールサンド、重質油改質に取り組まれました。1985年に石炭液化で石油学会論文賞を受賞されています。その後、工業技術院 の中では一貫してエネルギーに取り組まれ、1994年にはエネルギー資源部長、2001年には改組した産総研のエネルギー利用研究部門長になられています。 また、学界活動では、石油学会理事、日本エネルギー学会副会長、エネルギー・エコロジーネットワークの幹事を歴任されています。 今日は、この30年間にわたるエネルギー開発を身をもって語れる貴重な経験をお持ちの請川さんに、忌憚のないお話を伺えるのではないかと期待して おります。それでは、請川さんよろしくお願い申し上げます。