6.結論
   以上述べたように、坂村、Stallman、Torvaldsがそれぞれの中心的役割を果たしたTRON、GNUおよびLinuxの各プロジェクトは、情報化社会の要となるコンピュータ基本ソフトウェアの開発において、オープンな開発スタイルあるいはオープンな利用の仕組みという新しい手法による解決方法を生みだした。これは探究心に富んだテクノアントレプレナーシップの発揮によるものである。その結果、広範な人々の知恵を集めることが可能となり、これまでにない高いレベルの成果をもたらしてコンピュータ利用の新たな発展をもたらした。さらに、この新しいオープンな手法は、新しい開発モデルを提示してコンピュータソフトウェア業界におけるそれまでの市場の常識を覆すような影響を与えている。すなわち、通常の市場経済とは異なる仕組みのなかで育まれた工学知が、市場経済側のテクノアントレプレナーシップを刺激し、生活者への価値の提供を実現しつつある。

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