The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002
受賞者
講演録
スティーブン・P・A・フォダー
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
Q&A






スティーブン・P・A・フォダー
 
back
質問1:
あなたがアフィマックス社に入社した時、はじめからジーンチップアレイを製造しようとしたのですか。それとも他の目的で研究していたのですか。アフィマクス社の中で、いかにして革新技術を開発しアフィメトリクス社を創ったのでしょうか。

フォダー:
私がアフィマクス社に入ったとき、研究の目的は多数の化学物質群を作ることができる方法を開発することでした。主な目的は、医薬用のレセプターをスクリーニングすることでした。研究をしている間に、ペプチドとDNAのマイクロアレイを開発しましたが、これらは主として高分子化学用でした。私は、高度に複雑なDNAアレイを製造することは大きな可能性があると思いました。この技術に集中するためアフィマクス社を離れアフィメトリクス社を起こしました。ここで指摘しておきたいのは、私の考えは当時広く受け入れられてはいなかったということです。そして多くの人々は、そのような考えを追求する我々は狂っていると考えました。実際、たくさんの企業が私たちにアプローチしてきましたが、そんなものができたとしていったい何に使うのかと質問されたものでした。幸運にも、私たちは資金があり、またルバート・ストライヤー、アレハンドロ・ザハローニ、ポール・バーグのような人々とよい関係があり、この技術を追求することができました。

質問2:
三つ質問があります。1万のSNPマーカーを搭載したジーンチップアレイを開発したとのことですが、いつ上市されるのでしょうか。そして値段はいくらくらいになるのでしょうか。また、1万という数を選択した理由を教えて下さい。1万のSNPマーカーを搭載したジーンチップアレイと汎用チップとの精度の違いを教えて下さい。

フォダー:
大変よい質問です。順番を変えて回答します。初めに、1万のSNPマーカー搭載ジーンチップアレイは分析の簡便さとなるべく早くユーザーに製品を供給したいということから選択しました。分析技術そのものは、スケールアップは容易だと考えています。実際、数十万のDNAマーカーを分析できるようスケールアップすることが可能です。コストですが、一般のマイクロアレイにおいて発現解析における遺伝子当たりのコストが下がったのと同様に、この種の同時解析技術はSNP当たりのコストを徹底的に下げるだろうと思います。このチップの技術は現在、販売用にテスト中です。値段と供給時期については、アフィメトリクス株式会社の鈴木社長が来ているので聞いてください。私たちは、1万のSNPマーカー搭載ジーンチップアレイをその性能と正確性の故、選択しました。

質問3:
DNAチップを用いることにより、医薬の開発期間が短縮できると言われましたが、もう少し詳しくお話して下さい。製薬企業の規制にも関係してくると思われますが。

フォダー:
薬の開発にこの技術が用いられる主な理由は、第一に、よりよい標的物質を選択できること、第二にターゲットに対する効果を非常に早い時期に評価可能なこと、そして最も重要なことは、可能性のある薬を商業化まで持っていくべきか否か早い時期に判断することができることだと思います。実際、これは将来性のない化合物を開発する費用や危険性を軽減させる一つの危険緩和戦略です。さらに、これは臨床試験において薬に対する患者の反応を評価し、なぜある薬物が特定の患者に対して効果がなく、また毒性を示すのか理解する手段の一つです。

司会(松原):
フォダー博士、ありがとうございました。がんの診断、予後そして創薬におけるDNAマイクロアレイの持つ力を印象づけられた素晴らしいお話に強い感銘を受けました。そしてまた、新しい技術を用いたSNPの分析のお話にも感銘を受けました。お話のなかでこれらの研究の人類の多様性と発展への貢献に対するお考えについてもお聞きすることができました。さらに、今から開発しようとされている先端技術とそれがどのように人間社会に貢献するかという点についても印象深いお話をして頂き、本日は本当にありがとうございました。






 
back
講演録トップへ

武田賞フォーラムトップへ

武田賞TOPへ