ヤング武田賞2014 受賞者


最優秀賞

Tanapon Phenrat Tanapon Phenrat (ナレスワン大学、タイ)
タイ環境保全構想(TERI) の提唱と実践

  受賞者はTERI(Thailand’s Environmental Restoration Initiative)を提唱し、政府、企業、地域住民、大学や研究所、メディアなどが一体となった環境保全活動を推進している。政府省庁と協力して、環境保全ガイドラインを策定、公開し、自ら開発した保全技術のフィールドテストを汚染現場で行った。水中のフェノールを減少させるオゾン発生器を設置し、安全な水を提供した。また、磁気を利用した技術により、カドミウムで汚染された土壌の改質を行った。5つのコミュニティとNGOとともに環境改善にかかわり、4年間で15の実験プロジェクトを行い、タイの主な汚染個所10ケ所のうちの4ケ所を改善した。
  大学の研究に留まらず、政府、企業、地域住民、大学や研究所、メディア等の多様な関係者を組織し、ガイドラインを策定・公開し、汚染現場での水質改善や土壌改質のフィールドテストを行い、実際に効果を上げている活動は、最優秀賞に値する。


優秀賞

Azran Azhim Noor Azmi Azran Azhim Noor Azmi (マレーシア工科大学、マレーシア)
超音波脱細胞化技術を用いた再生医療用生体由来スキャフォールドの開発

  再生医療で用いる心臓弁や導管の作成には組織が再生するための足場となるスキャフォールドが必須である。生体由来のスキャフォールドは、多くの点で従来使われている生分解性ポリマーより、利点があるが、これまで開発されている高静水圧法は、スキャフォールド作成のための装置が高価であるという問題があった。受賞者は、日本の東京電機大学に滞在中、超音波処理で細胞成分だけを除去することにより生体由来スキャフォールドを調製する方法を取得した。この方法は、安価で多様な目的のスキャフォールドを調整することができ、工業生産することも可能である。受賞者は、マレーシア工業大学で自分の研究室を立ち上げ、超音波を用いたスキャフォールド作成法の改良に取り組んでいる。超音波処理に基づくスキャフォールド作成技術が完成し、患者に安全で安価なスキャフォールドを提供するためには、臨床実験や法的規制対応など多くの課題があるが、患者のためマレーシアに戻って意欲的な取り組みを続けていることを評価し、優秀賞を与え激励するものである。


安富啓太 安富啓太 (静岡大学、日本)
TOF法を用いた三次元スキャナ用高分解能イメージャの開発

  三次元スキャナなどに使う、対象物の三次元形状を読み取るイメージャを開発した。短パルスレーザー光を投射して跳ね返ってくる時間を測定し、光源からの距離を求め、被写体の表面形状を読み取るTOF測定法を用いて高分解能を実現した。損失無く繰り返し電荷を溜められる新しい画素構造を開発し、高速動作を可能にした。画素を二次元上に配置したときに生じる制御クロックの遅延時間差の影響を解消する補正回路を考案して、世界最高の距離分解能0.3mm を実現した。
  受賞者は、このイメージャを国際学会(ISSCC)で発表した。また特許を出願し、ブルックマン・テクノロジー社とライセンス契約を結び、この高分解能TOFイメージャ・チップを製造し、三次元スキャナメーカーなどに販売する計画を立てている。 三次元プリンタ以外にも、ゲームや工業用の用途も期待できる。


Moses Musalaki Kima Moses Musalaki Kima (ホガベ保全会社、パプアニューギニア)
パプアニューギニア山村での小規模水力発電システムの構築

  受賞者は、パプアニューギニアの山岳地帯のHogave村で20kW小規模水力発電施設と送電網を建設するプロジェクトの中心的な役割を果たしている。プロジェクトは、受賞者の父親David Kimaによって2010年3月に始められ、スイスのHans Wilsdorf Foundationによって資金援助されている。受賞者は、2010年にパプアニューギニア工科大学を卒業後、本プロジェクトに参画し、河川の現状調査、発電機と設置場所の選定、貯水ダム、導水路、送電線の設計、発電設備の調達と管理、修理担当者の育成等を行っている。小規模水力発電と送電網の構築により、携帯電気製品の充電、溶接や研磨などの工作機器使用、肉などの冷蔵等が可能になり、Hogave村および近隣の村の生活スタイルが改善している。


清水信哉 清水信哉 (AgIC株式会社、日本)
導電性インクを使った誰でも作れる電子回路基板製作技術の事業化

  受賞者はマッキンゼー在職中に、三菱製紙が開発した銀ナノ粒子導電性インクを市販プリンタで写真用光沢紙に印刷することで簡単に電子回路基板ができることを知り、ビジネスになると判断してマッキンゼーを退職して2014年1月に自ら会社を興した。この方法で作成する電子回路基板は量産向けではないが、従来のようにブレッドボードを外部に発注する必要がない。安価に、しかも数分で実験用や試作用として手元で直ちに電子回路基板がつくれる技術は、産業界だけでなく教育的にも利用価値があり、電子工学分野の教育環境を著しく改善する可能性がある。
  2014年3月には、米Kickstater社の資金調達キャンペーンに応募し、856万円(8万米ドル)の資金を調達した。その後日本政策金融公庫などから3888万円(36万米ドル)の資金提供を受けるなど短期間に資金調達も行い、ベネッセとも提携して教育キットの販売を目指すなど、インターネットを駆使して世界的な広がりをもった事業展開を図っている。


Venkatesh Seshasayee Venkatesh Seshasayee (ステラップス・テクノロジー社、インド)
小規模酪農家向け乳牛自動化システムの事業化

  インドは世界有数のミルク生産国であるが、全生産者の7割を占める小規模酪農家は、搾乳などを人手で行なっており、温度管理が十分でないため採取したミルクが変質することもあり、収益を上げることができなかった。受賞者は、搾乳器、低温貯蔵庫のような最低限の設備とデータ管理を統合的に行えるシステムを提供できれば、小規模酪農家は人手に頼らず、収入を増やすことができると考え、SmartMooTMというシステムを考案し事業化した。
  インド工科大学マドラス校のインキュベーション組織の支援によって、ベンチャーファンドからの投資を得て、2011年にステラップス・テクノロジー社を設立した。酪農経営情報や最適飼料情報の提供、自動搾乳機、遠隔制御できる低温ミルク貯蔵庫、乳牛の健康状態の管理や搾乳ピークイールドの管理などを行うデータベース管理ソフトウェアからなるシステムを製品化した。このシステムは20以上の小規模酪農家で採用され、生活レベルの向上に貢献している。