The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002
受賞者
講演録
天野 浩
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Q&A






天野 浩
 
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[図 10]

[図 11]

[図 12]

[図 13]

[図 14]

[図 15]
[図 10]
従来、ガスの流速は秒速5 cmと非常に遅かったんですが、それを100倍の速さで供給することにしました。この時に苦労したのは、ここのところです。絵では非常に簡単に描いてありますが、この部分をガラス細工で作りました。当時は予算もなかったですし、外注してますと時間がかかりますから、全部自分でやりました。最初のうちはなかなかできませんでしたが、30回、40回と繰り返すうちに思い通りのガラス細工ができるようになり、ガス供給もきれいにできるようになりました。

[図 11]
これが、それをまとめた論文です。まず、当時ガリウムの原料とアンモニアは、反応しやすいから、分けて供給しなければいけないという常識がありましたけれど、それを敢えて打ち破って、できるだけガス流量を増やすために、一緒に供給しました。それから、ガスの流速も当時のMOでは常識はずれの、非常に高速のガス流量で供給を行いました。さらに、このサセプタ部分、これも試作をしたんですが、斜めに切ることによって、きれいなガス流を実現しました。

[図 12]
これによって、一応制御性の良いガスの供給ができるようになりました。成長装置としては、一応安定したものができるようになったわけです。それによって、従来非常にゆっくりしたガスを流していたときは、例えばこれはアルミニウムガリウムナイトライドという混晶ですが、混晶が全く制御できませんでしたが、それが、非常に制御性良く制御できるようになったわけです。

[図 13]
続きまして、成長方法に移ります。
[図 14]
この間私は、大学に一日たりとも行かなかった日はない、というほどずっと実験を続けておりました。実験回数にしますと、1,500回以上の実験をしておりました。ところが、できる結晶は必ずすりガラスだったんです。ずっと根を詰めて実験していたんですが、なかなかうまくいかなくて、そうこうしているうちに、修士課程の他の学生はどんどん就職先が決まって進路が決まっていく。私は行くところもないもんですから、ドクターに残ることになりましたが、なかなか実験もうまくいかなくて、どういうように論文をまとめようかということもまったく思いつかない、暗澹たる状況でした。

[図 15]
あるとき、たまたまなんですが、結晶成長装置の炉の調子が悪くて温度が上がらないときがありました。そのときに赤ア先生のお話にもありましたが、あることが頭に浮かんで、ガリウムナイトライドの成長の前に、AlNを薄く敷いたわけです。やっているうちに、炉の調子が戻ってきたものですから、今度は温度を上げてガリウムナイトライドの成長を行いました。炉から取り出してみると、入れたときのサファイアの状態と全く一緒だったんですね。「あれ?、原料を流し忘れたかな」と思ったほどです。

ところが、クリーンルームから出てきて、顕微鏡を覗いてみると確かに成長している。そのときの、何といいますか、心臓が打ち震えるような感動というのは、今でも忘れることができないものです。

ということで、この方法を使うと、再現性よく良い結晶ができるということが分かりましたので、その次に、伝導性制御の問題に取り組みました。




 
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