The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002
受賞者
講演録
中村修二
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Q&A






中村修二
 
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私がなぜこういうことを言うかというと、将来の日本と世界の科学技術の差とがどんどん大きくなってくるからです。日本は製造業中心で今まできましたが、中国とかが追い上げてきて、苦しくなっていますよね。私が言ったのはそういうことです。今までの日本のシステムが、製造業中心のシステムだった。難しい大学入試でみんな同じような平均的ロボット人間を作って、「永遠のサラリーマンや!」「製造業、製造業や!」ってやってきた。しかし、それはもう、中国とか見ますと非常に厳しいですよね。で、今度創造性のある製品作りをせよとか、ベンチャーを育成せよとか言って国が頑張って動いてやっていますよね。しかし、根本的に、大学入試とか、若い人の考え方が変わるようなシステムにしないことには、国が動いたって永遠に変わらないと思いますね。

それと大学ですね。大学が日米ですごい差があります。日本の大学では、大学の先生がお金のことを言うのはとんでもないことなんです。学生もお金のこと言うなんてとんでもないんです。向こうでは、いいことなんです。お金を稼げる先生は、非常に優秀な先生なんです。よく言うのですが、むこうの先生はみんな企業のコンサルティングをやっている。工学部ですよ。企業のコンサルティングをやって、プライベートにお金をもらう。自分にお金をもらうのですよ。それで、いくらもらったっていいのです。それはプライベートなことなんです。よくできる先生だと5社とか10社やるわけです。それだけでウン千万という、すごい収入が入りますよ。全部自分のプライベートな収入です。日本では、医学部の先生が医薬品のメーカーから賄賂をもらって刑務所へ行くというやつです。あれはコンサルティングなんです。日本だと、コンサルティングをやると刑務所行きです。で、これは非常に優秀な先生なんです。優秀だから、企業が賄賂を贈って、コンサルティングをお願いしているわけです。企業なんて、できない先生に誰も頼まないですよ。アメリカだったら、それは尊敬されるのですが、日本だと刑務所行きです。こういうことがあったら大学の活性化は、まるでないですよね。インセンティブがないですよ。大学の先生にインセンティブがないのに、学生に「さあ頑張って勉強せい」って言ったって、こりゃむずかしいです。だって向こうの大学では、どんなところに学生が集まるかいうと、賄賂でがっぽ、がっぽ稼ぐ先生のところに一番学生が行くんですよ。優秀な教授が賄賂をもらってもっといい研究をしたら、自分でベンチャー会社を起こすわけです。ベンチャー会社を起こして、それでさらにがっぽ、がっぽ稼ぐんですよ。そういうところに行ったら、学生は教授がやっているベンチャー会社とかコンサルティングを自然に学んで、自然にベンチャーのことを知るわけです。「ベンチャーをどうやったらいいか?」とか、ベンチャーのシステムをです。それで自然にベンチャーをやって、アメリカンドリームを夢見ようというふうになるわけですよ。ところが日本の大学の先生はそんなことやったら刑務所行きです。学術研究ですよ。

全然話しがそれてくるのですが、つい先日、東大の学生のBLSという組織で講演をしました。東大の学生が中心になってベンチャーをやろうとかいう組織を作ったのです。講演の後でその学生らと話したら、学生らは必死になってベンチャーをやろうと考えている。ところが、自分のついている教授、東大の教授の先生に、そういう会に入ってベンチャーのことを考えているって言ったら、かんかんになって怒るらしいのです。「おまえ、大学というのは、そんな金のこと考えたらあかんのじゃ。学術研究するとこや。こんなもんとんでもない。」って。もうクビにされるように言うのです。「クビ」、とか「出て行け」という感じで。だから、コッソリそういう会に入ってベンチャーのことをやっているようです。ところが、日本政府はね、東大を中心にして「さあベンチャー育成のナントカ・カントカ」とやっているのです。建前と本音が違ってるのです。学生が一番頭にきているのです。そういうふうに国は言って、学生はそういう会でやっているけれど、実際についている先生は、「そんなのはダメ」と非常に頭が固いわけです。

私はよく言うのですが、ベンチャーだと自然に非常識なことにトライして、独創的な製品ができるわけです。私が、青色LEDができたのは、中小企業に行っていたからです。メインストリームの大手企業に行かなくて、偶然たまたま徳島県阿南市のド田舎の会社、いい言葉でいうと、ベンチャーですよ。そういうベンチャーだったから、非常識なことを単に社長の許可をもらえただけで何でもできたのです。だから、非常識なことにトライできるベンチャーがいいですね。ご存知のように、マイクロソフトなんかも、全部学生が始めたベンチャーですね。そういうベンチャーだと、非常識なことトライできて、独創性のある製品ができるからです。大手企業ですと、やはり難しいですよね。できないことはないのですが、大手企業って、必ず会議をして、青色LEDのプロジェクトチームを組んだりする。青色LEDを大手企業でもかなり研究していたのです。青色LEDができてから、よく大手企業の研究者と話しをしました。みなさん10人ぐらいのプロジェクトチーム組んで「さあ、青色LEDをやろう」って。それで、材料の話をすると、10人いたら9人がZnSeでやろうって言うのです。これは非常にいい結晶ができるから、常識で考えるとZnSeになるのです。一人ぐらいアホなのがいて、GaNやろうって言ったらね、「おまえアホか」ってみんなに責められる。「できるわけないだろ、こんな結晶ぼろぼろで」「おまえ大学行ってもういっぺん勉強せい」ってかんかんになって怒られるわけです。だから自然に常識になるのです。しかもたくさんの上司が、プロポーザルにハンコを押すたびに、常識になっていくんですよね。だから、独創性のある製品作りは、やっぱりベンチャーで、一人でやるとかね。極端な話、一人でやると何でもできますしね。大手企業はやっぱり「みんなで協力して製造業」だと私は思うのです。ですから、そういう意味では、ベンチャーの独創性を養わないといけない。だいぶ話がそれましたが、そういうことで、私の発表でした。どうもありがとうございました。

 
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