The Takeda Foundation
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MOT事例研究 本の内容

トップ:本の紹介、書評

第1章:液晶ディスプレイの発展と商品化
第2章:薄膜SOI基板技術――実用化へのみちのり
第3章:DNAチップの誕生とブレークスルー
第4章:Linuxはなぜ成功したのか

液晶ディスプレイ、薄膜SOI基板技術、DNAチップ、Linuxの開発から商品化、また成功にいたるまでのプロセスを徹底調査しまとめ、技術開発がなぜ成功したのか、その要因を探る。






第3章 DNAチップの誕生とブレークスルー

大戸範雄 (理事)

アブストラクト

  DNAチップとは塩基配列の異なるDNAを基板上に何千何万種と格子状に整列させた一種のセンサー。 DNAチップは、一度に数千〜数万種のDNAを解析できることから、多数の遺伝子の発現解析、個人によって異なる遺伝子変異(SNPs)の同時解析が可能である。
  DNAチップの技術は、コンビナトリアル合成、インビトロ試験による high through-put スクリーニング、プロセスの miniaturization というコンセプトを追求していた drug discovery のベンチャー Affymax から生まれた。
  光リソグラフ法によって多種類のバイオポリマー(ペプチド、DNA等)を合成するアイディアは Affymax のCOOであった Leighton Read によって提案され、同じ会社の Stephen Fodor らによって初め drug discovery を目的として検討されたが、技術が確立されたのは多種類のDNAを基板上に搭載するDNAチップであった。 DNAチップは、DNAの分析が可能なことから drug discovery ではなく、遺伝子解析の新技術として検討され、Affymax 社から遺伝子解析のベンチャー Affymetrix社がスピンアウトした。
  Foder らによってDNAチップは解析装置を含むシステムとして提供され、Affymax の創業者の Alex Zaffaroni がつくりあげた広範なアカデミアのネットワークによって使用方法が検討された。その後、後載せ型のDNAチップを用いた 遺伝子の発現現象が Stanford 大学の Patrick Brown らによって報告され、遺伝子機能解析でのDNAチップの有用性が明らかになったこと、国際的なヒトゲノムプロジェクト が民間企業セレラの参入により急速に進展し機能が未知の遺伝子が多数発見されたことから、DNAチップによる機能解析の必要性が高まりDNAチップが広く使われるようになった。
  Affymetrix のDNAチップの技術は、Read による斬新なアイディアの提案、Zaffaroni による様々なアイディアを育むオープンで活気に満ちた環境の設定と運営、それを追及する Stephen Foder というキーパーソンの存在、豊富な資金、アカデミアとの広範なネットワークの産物である。


GeneChip , Stanford型