吉川先生講演
1.科学についての新しい社会契約
2.第二種基礎研究を含んだ本格研究による契約の履行
3.一般化製品
4.夢、悪夢、現実
5.科学的方法の非対称性
6.第二種基礎研究が重要
7.第二種基礎研究の論理的構造


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[図 16]
6.第二種基礎研究が重要

 夢の時代というのは、狭い意味の基礎研究で、これは公的資金も準備されているし、その成果は科学論文として評価することもできます。(図16) ここは非常にエスタブリッシュされた部分ですね。現実の部分というのは製品開発であり、これに対してはもう市場があります。私的資金が入ってきて、製品というかたちで善し悪しが判断されるわけですから、これとこれはメカニズムが基本的に同じです。ただ問題はこの悪夢の時代です。何と呼んでいいかわかりません。われわれは第二種基礎研究と呼んでいますけれども、これを実現化しようと思っています。これは誰がサポートするのでしょうか。今まではこれをサポートする人がおりませんでした。成果もノウハウみたいになって、結局インダストリーにつながって、知らないうちにこっちへ行くわけですから、第二種そのものというのは評価されません。これが悪夢なのです。そうではなくて、新しい夢というかたちにしようということで、先ほどどこかで出た使用知識(Utilization Knowledge )を体系的に研究する、すなわち研究した結果が次世代に伝わる、あるいは第三者に伝わる、それは基礎研究でいいわけですが、それを基礎研究として位置づけようとしています。当然そこには公的資金も私的資金も、そういうことを認識すれば入ってきます。それでは発表をどうするか。新しいタイプの科学論文で、これは今のところ『ネイチャー』とか『サイエンス』に出しても駄目です。そういうのは二番煎じと言われてみたり、科学的な論理性が足りないと言われます。それはやってみてわかりますけれども、論理性だけでは駄目なのです。基本的にはアブダクションという、論理としては非常に歪んだ論理系を使わなければ一般にはできません。そういったことで、そういったアブダクションのレベルというのは、水準を評価するような、全然この科学論文の評価とは違う評価体系をつくらないといけません。具体的にはテキストをどんどん書くこともある。あるいはベンチャービジネスをつくるということ、データベースかもしれません。まあさまざまなことを考えながら、これのアウトプットをどう客観的に考えていくかというわけです。


 
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