The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002
受賞者
講演録
パトリック・O・ブラウン
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
Q&A






パトリック・O・ブラウン
 
back next

[図 14]

[図 15]

[図 16]

[図 17]

[図 18]
[図 14]
このスライドは、開発初期の抗体マイクロアレイですが、それは、個々のスポットが抗体から成っていて、血液サンプルに存在するタンパク質の違いを測定するのに使われます。このテクノロジーが進展すれば、一滴の血液あるいは数個の細胞中にある何千という種々のタンパク質が測定できるようになるはずです。この研究は、まだ発展途上にありますが、非常に将来性があると思います。

フォダー博士は、新しいテクノロジーを発明し、それをビジネスに結びつけて製産販売し、そして成功するという、テクノロジーとアントレプレナーシップとを融合した顕著な例です。その技術は、そうした方法で、広く人々に利用されるようになりました。

[図 15]
私にはビジネスの才能はありませんし、それ程ビジネスに興味があるわけでもありません。その代わりに、私は大学で働いております。私の仕事は、基本的に、教えることであり、また基礎研究を行うことです。実を言うと、これは最高の職業です。

私が常々考えてきたことですが、私たちのDNAマイクロアレイは、製品というより、むしろプロセスです。つまり、私がそれを普及する方法としては、その使い方を人に教えるというのが自然だったのです。製産したり販売したりすることではありませんでした。どっちみち、私にそうする資格があったとは思いませんが。

私の研究室で、ジョー・デリシとビシー・ライヤーは特によく働いてくれました。そして、自分たちの考えで、マイクロアレイをプリントするのに使う簡単なロボットの組み立て法や、ロボットを使ってアレイをプリントする手順、アレイを使った実験法などをすべてまとめ、詳細な使用説明書を完成させました。また、マイク・アイゼンは、現在は自分の研究室をもっていますが、マイクロアレイデータを解析するためのソフトウェアを開発し、それを無料で配布しました。

こうした説明書やソフトウェアを、誰でも利用できるように、私たちの研究室のウェブサイトに掲載しました。そのサイトでは、誰でもそれらを自由にダウンロードできます。このスライドは、私たちの研究室のウェブサイトを示しています。ここにあるリンクで、マイクロアレイの作り方を示すマニュアルへ行けますし、ソフトウェアやデータなどへも同じようにリンクしています。

実際、これは大成功でした。費用も関係ありません。私たちは何も生産していませんし、輸送する必要もありませんから、課金する必要がないのです。スティーブも、このようにしていたら良かったのにと思うことがあるはずです。そうすれば、料金体系についての質問などに答えなくてすむのですから。

私たちがテクノロジーを普及させた方法は、インターネットの疑いもなく大きな可能性を示す一つの例にすぎません。大容量の情報を無料で世界中どこでも利用でき、生産者にも費用がかからないというインターネットには、世界中の科学者や医者、技術者、企業人だけでなく、ただ単に科学や技術に興味をもっているだけの人にでも、科学的発見の可能性をもたらす、実に驚異的で未知の可能性が秘められていると思います。

[図 16]
この数年間、ハロルド・バーマス、マイケル・アイゼンと共に、機密扱いされていない一般的な科学知識を世界遺産としてインターネット上で自由に利用できるようにするために、実用的なビジネスモデルを開発しようとしてきました。また、その目的に添った非営利組織を作るための資金調達も行っています。私たちは、それを"Public Library of Science"と呼んでいます。

この組織は、世界中の人が誰でも、世界中の科学文献を自由にオンラインで利用できるようにするという目標を掲げています。私たちは、これから数週間のうちに、その設立を発表する予定にしています。

[図 17]
さて、締めくくりは、今日の私の話の中で最も重要な部分です。これまで話してきたことは、すべて、言うまでもなく、私と共に働いてくれた優秀な学生達と素晴らしい研究仲間たち、それに世界中の共同研究者たちとの仕事ですが、残念ながら、ここでは、講演の中で述べた研究に従事した人々についてしか述べる時間がありません。

ダリ・シャロンは、私の研究室の有能な大学院生で、スティーブ・スミスはスタンフォード大学での研究仲間です。彼らは、技術的に重要なノウハウを提供してくれました。そして、このテクノロジーのアイデアを実用化するために多くの試行錯誤を繰り返してくれました。

私たちの研究室で、最初に、DNAマイクロアレイを使って遺伝子発現パターンを見るという実験をしたのは、マーク・シーナとダリでした。

ジョー・デリシは、最初の頃の使いものになるかどうかわからないようなテクノロジーを、ここまで信頼できるものにしてくれた重要人物です。彼のおかげで、この技術は世界中に普及することになりました。

ジョーとビシー・ライヤーは、私たちの研究室で抱えていた数多くの生物学的に重要な課題に、初めてDNAマイクロアレイを適用し、数多くの結果を出してくれたパイオニア達です。

マイク・アイゼンは優秀なコンピュータ・プログラマーで、データ解析に必要なソフトウェアを、ほとんどすべて作ってくれました。

最後に、ディビッド・ボッツシュタインは、過去10年にわたってスタンフォード大学での私の同僚ですが、今日お話したがん研究のほとんどは、彼との共同研究でした。

アッシュ、マックス、ポール、チャック、ジョン、ガビンは、今日の話では詳しく取り上げませんでしたが、重要な働きをしてくれました。

シン・チェン、サム・ソー、レウン、ユエンは、先程お話した胃がんに関する研究をしてくれた人たちです。

[図 18] ありがとうございました。








 
back next
講演録トップへ

武田賞フォーラムトップへ

武田賞TOPへ