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第10回レポート
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第10回リーフレット

第10回 カフェ・デ・サイエンス


講師: 平田典子(ひらた・のりこ)
      森田茂之(もりた・しげゆき)
日時: 2006年9月29日



数学カフェ 「整数の不思議」 BACK

三井:ニューヨーカーをお読みになった唯一の方、何か一言。

>>>数学者の方は、数学が好きだからやっているだけで、別に人様に褒めて頂くとか、 お金は要らないんだというようなことが書いてあったと思いますが、織田さんを始め、皆さん、数学が好きで、数字と付き合っていれば、 お金なんか要らないよという方ばかりなのかなと思いました。私は、お金ばっかりの人しか相手にしてきませんでしたので、 今からでも、そういう人達の世界に入りたいなと思っています。

三井:先生方、何かご意見がございますか。

平田:数学の本や雑誌は高いですし、人と議論するには旅行をしないといけませんから、そういうお金は要りますけれども、 他には余り要らないですね。もともと儲からないことは分かっていますから、儲けようと思って数学を選ぶということはないですね。

森田:お金はともかく、賞をもらうのは、ある意味で、非常にエンカレッジされるわけで、ペレルマンのように賞まで辞退するのは、 数学者のなかでも特異だと思います。だいたいの人は喜んで受けるでしょうね。グロタンディエク(Alexander Grothendieck、1928-)でも、 フィールズ賞は受けています。彼は非常に有名で、20世紀最大の数学者だと思いますが、多少、ペレルマンに似ているところがあるかもしれませんね。 数学者社会と完全に絶縁してますから。ペレルマンも実はそうなわけで、ただ、もう数学はしていないかというと、推量しても意味はないですが、 数学はしているんじゃないかと期待していますけど・・・。

織田:数学をやっている人でも、賞の話は別にして、お金に対する態度はいろいろ違うんじゃないかと思います。 アメリカだと、数学やって、お金儲けの世界に入るという方法もあります。たとえばヘッジファンドというのも、技術的には数学を使ってやるんです。 最後の数学カフェで、確率論の話になったら、そういう話をしてもらえると思いますが、大多数の人は、 そういうことを気にしていないんじゃないかと思うんですけど・・・。

賞については、今、数学の結果を世の中に広めるという側面もあって、必ずしも否定的というわけではない。 ペレルマンの記事は、朝日新聞の第2面に出してもらえたでしょう。拒否したから大きく出たのかもしれないけど、 数学も何か新しいことが起きているというのを知ってもらえると嬉しいわけでしょう。

私が大学1年生のときに、指導教官となる先生に、大学で研究したいと言ったら、「いいですけど、数学にはノーベル賞がないですよ」と言われました(笑)。 ポアンカレ予想は、クレイの懸賞問題(Clay Mathematics Instituteが定めたMillennium Prize Problems)で、100万ドルの賞金が懸かっているのですけど、 先日、新聞の小さな記事を見たら、ロシアでは、既にペレルマンが賞金も拒否したことになっていて、「100万ドルをペレルマンのように見る」というのは、 100万ドルが目の前にあっても、無いのと同じように、少しも動じないということらしい。ロシアも市場経済になり、最近の東大の教授会と同じで、 お金お金という話しかしないので、そういうのを批判的に見る人達がいるということで、私は、その気持ちには大賛成です(笑)。

三井:数学者達が百年もかかって解決した問題を、こんな少しの時間で私達が理解するのは、到底無理だと思いますけれど、 数学者の人間的な側面のほうは、多少分かって頂けたかなと思うんですが、いかがでしょうか(拍手)。どうも、有り難うございました。


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Last modified 2006.12.19 Copyright(c)2005 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.