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第10回レポート
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第10回リーフレット

第10回 カフェ・デ・サイエンス


講師: 平田典子(ひらた・のりこ)
      森田茂之(もりた・しげゆき)
日時: 2006年9月29日



数学カフェ 「整数の不思議」 BACK NEXT

三井:数学の場合には、何とかの予想というのを、よく聞きますね。ここには、そういう予想がなかったのでしょうか。 また、タオが発表した後、他の数学者が認めるまでに、時間がかかったんでしょうか。

平田:予想については、エルデシュ予想と呼ぶ人もいますが、実は、エルデシュ以前にも考えた人がいまして、 実際には60年くらい前の問題と言われております。

また、検証、つまり、この論文が発表されてから確かめられたのは、割合と早かったですね。長い間塩漬けになることもなく、浅漬けで仕上がりました。 そういう意味では、よい論文、分かり易い論文ですね。

少し難しい話になりますけど、相手が素数の場合には、等間隔つまり等差数列を見つけるのは、素数が特別にメチャクチャにあるから面白いんですが、 自然数全体だと簡単な問題になりますね。自然数は全て1という等間隔ですから、「自然数全体の中には、すきなだけ等間隔組がある、 つまり、任意の項数の等差数列が存在する」のは当たり前。素数だとフィールズ賞レベルになる。偶数だとどうだろう。 偶数というのも等間隔ですから、いくつでも長い組がとれる。 では、どういう整数の集合であれば当たり前から当たり前じゃないことになるんだろうという問題が発生しますね。

実は、セメレディー(Endre Szemeredi、1941-)という人が、今から42年前に、「整数の部分集合で、中にある要素の個数が十分に多ければ、その集合は任意の長さの等差数列を無限通り持つ」ということを証明しました。これは「セメレディーの定理」と呼ばれています。 十分に多いというのはどれくらいかと言いますと、常密度と呼ばれる確率の言葉で表されるものが正であれば良いということですが、その整数の部分集合を考えるときに、それが無限集合であることが、先ず絶対に必要であり、さらに、中にある要素の個数がスカスカでは駄目だということになります。

セメレディーの定理から、タオの証明も簡単にできるのではないかと思うかもしれませんが、素数の集合は、セメレディーの言った「十分多い」よりも、 残念ながら、少し足りなかったんですね。だから難しかったのです。これも、素数の不思議なところね。40年前の定理からは出てこないから、 40年間も皆が悩んだわけです。

素数には、他にもいろんな性質があります。たとえば、素数のギャップ問題といいまして、 「隣り合う素数の間隔はこれこれの長さ以上である場合が無限回現れる」という予想がいくつかあります。 「隣り合う素数の間隔が2以上である場合が無限回現れる」となると、有名な未解決問題「双子素数の予想」となります。 その予想に向けて、皆頑張っています。昨年も一段階進展があり、研究者には日本人が1名入っております。 隣り合う素数同士の間隔をコントロールしようというこの問題は昔からあり、予想されているものにはまだ遠いんですけれど、近づいてはいますね。

三井:今回も素数の会になってしまったみたいですけれど、今日のテーマである、一般的な整数の不思議ということで、 何かお聞きになりたい方はいらっしゃいませんか。

>>>整数の中で、偶数や奇数、素数の他に、何らかのくくり方ができるようなものはあるのでしょうか。

平田:今日、お話しようかと思っていた「ピタゴラス数(Pythagorean triple)」というのが、その一つです。 ピタゴラスの定理というのは、直角三角形の斜辺の2乗は、他の二辺のうちの片一方の辺の長さの2乗に、 もう片一方の辺の長さの2乗を足したものになるということで、『ピタゴラスの定理100の証明法』という本も出ていますが、幾何を使ったり、 代数の式だけを使う証明もあります。

そのピタゴラス数というのは・・・・・

(このとき、ゴキブリ闖入。「ゴキブリはタマムシの仲間です」と平田さん。)

ピタゴラスの定理というと、32+42=52というのが簡単に出てきますけど、122+52=132とか、他にもいっぱいあります。 ピタゴラス数というのは、そういう3つの数の組、あるいは、その中で一番大きな数のことを指します。 ですから、32+42=52の場合には、5を2乗した25はピタゴラス・ナンバーであるというような言い方もします。

一般式は、X2+Y2=Z2ということですが、これが3乗になったX3+Y3=Z3になると、答となる三つの整数のどれかにゼロが混ざっていない限りは無理だというのが、 フェルマーの大定理、あるいは最終定理であります。それは、4乗でも5乗でも全部そうです。 この話は{{{こちら}}}にお書きします。

三井:今日は、ポアンカレのことを聞きたいと思っていらっしゃる方も多いので、この後は森田さんにお願いしたいと思います。 ポアンカレ予想に関しては、マスコミでもいろいろ採り上げていまして、数学以外のことも話題になっていますけれど、その辺も交えてお話して下さるそうです。

森田:ポアンカレ予想とは何かというのを、どうご説明しようかと思って、昨夜はよく眠れなかったんですけど、 結局、あまり良い答えを得られなくて・・・(笑)。

ポアンカレ(Jules-Henri Poincare、1854-1912)はフランスの数学者で、幾何学にも大きな貢献をしました。幾何学は、大きく分けて2種類あります。 ポアンカレの前に、リーマン(Georg Friedrich Bernhard Riemann、1826-1866)という大数学者がいまして、リーマン幾何学、あるいは、微分幾何学を確立しました。 ポアンカレは、もう一つの幾何学を創始したと言われ、それはトポロジー、あるいは、位相幾何学と呼ばれています。 角度や長さを完全に無視するわけではありませんが、2センチ離れていようが3センチ離れていようが、連続的に変形して同じ形になれば、 それは同じであると考える、いわば、新しい幾何学です。もう100年経っていますけれど、数学は何千年の歴史がありますから、 その中では一番新しい学問です。その新しい幾何学を創始した6つの論文の一つ、1904年に出された論文に、ポアンカレ予想が提示されたと言われています。

これは三次元の幾何学の問題です。我々が住んでいるのは、三次元の世界で、 縦、横、高さに相当する三つの方向に果てしなく広がっている宇宙空間だと思っていますよね。しかし、今の物理学では、宇宙は有限のものとして扱っているようです。 ポアンカレは、限りのある三次元の図形が、どのくらいあるかということを考えたんですね。

三次元というのは非常に難しいんですけど、次元を下げると比較的分かり易くなります。二次元において、限りなく広がるのは平面ですね。XY平面と言いますが、 ここで限りがあるものは何かと考えます。限られた境界のある平面を風呂敷だと考えると、境界がなくなるように風呂敷を丸めていって一点に縮めると球面になります。 これは、数学的にコンパクトと言いますけども、境界がなくて限りがある曲面ですね。こうした曲面は、球面の他に、浮き輪というのがあります。 浮き輪には、一人乗り、二人乗り、三人乗り、四人乗りとあって、無限に続くわけです。

この中で、特に球面というのは、この上にどんなに複雑に糸を掛け渡しても、糸の一点をピンで留めてから、その糸を引っ張ると、ひっかかる構造がないので、 いっぺんに縮みます。こういうのを、我々は単連結(simply connected)といっています。ところが、浮き輪のように穴があいていると、 その輪の中に糸を通すことになりますから、糸を引っ張っても縮みません。ここには、糸がひっかかるような、基本群と呼ばれる構造があるからなのです。 つまり、二次元の閉じた図形の中で、糸が縮んでしまう単連結であるのは、球面だけなわけです。

ポアンカレ予想というのは、それを三次元でやるわけです。二次元の球面と同じように、境界のない閉じた三次元の図形は、 三次元の球面というような言い方をします。三次元球面というのは、たとえば、立方体を四次元の方向へどんどん引っ張っていって、一点に縮めてしまう。 いいでしょうか(苦笑?)。一次元の数直線を区切ると有限の区間、線分ですね。線分を丸めて両端をくっつけると円周になります。 風呂敷を縮めると球面になります。立方体を縮めるときは、どの方向へもっていきましょうかということになるんだけれど、まぁ、できるんですよね。


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Last modified 2006.12.19 Copyright(c)2005 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.