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第15回レポート
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第15回リーフレット

第15回 カフェ・デ・サイエンス


講師:  大島泰郎(おおしま・たいろう)
ゲスト講師:  平林久(ひらばやし・ひさし)
日時:  2007年9月8日



異端児のみる生命 「宇宙の生命」 BACK NEXT

三井:皆さん、こんにちは.今日は、暑い中、よくいらして下さいました.これから、第15回のカフェ・デ・サイエンスを、「異端児のみる生命、宇宙の生命」というテーマで始めたいと思います.先ず、この会のルールを簡単に説明します.特に難しいルールはありません.自由に何でもお話下さい.ただ一つお願いしておきたいのは、専門用語は使わないということです.どうしても使いたい時には、ちょっとした解説を加えて頂くということで、なるべく、日常的な言葉を使ってお話下さること.それから、お一人で長々と演説なさらないこと.それくらいですね.

大島さんには、毎回、講師として来て頂いていますが、今日は、ゲスト講師として、平林久さんに来て頂いています.後で自己紹介を兼ねてお話して頂きたいと思いますが、ご紹介したい本が2冊あります.

一つは、2000年に出版されている集英社新書の『星と生き物たちの宇宙』という本です.平林さんと宇宙生物学者の黒谷明美さんとの対談の形になっています.対談と言っても、それがメールのやりとりになっているという非常にユニークで面白い本ですが、この本を読んで分かったことが一つあります.それは、平林さんは駄洒落がお上手だということです.皆さんの中にもそのような方がいらっしゃると思いますので、今日は、負けずに駄洒落を頻発して下さい.

もう一つは、1、2ヶ月前に出たものですが、海部宣男さんが書かれた『すばる望遠鏡の宇宙 - ハワイからの挑戦』(岩波新書)という本で、光学望遠鏡のお話が中心ですが、最先端のところまで書いてあります.光学望遠鏡で宇宙の生命を探るというのは、最後のところに出てきます.興味のある方はお読みになってみて下さい.

では、最初は平林さんに、呼び水になりそうなお話をして頂きます.

平林:皆さん、こんにちは.お招き頂いて、有り難いと思っています.大島先生と始めてお会いしたのは、よく思い出せませんが、私の学生時代だったかもしれません.「地球外文明を探すことはできるだろうか」というような集まりがありまして、その席上だったと思います.

先ず、自己紹介をさせて頂きます.長野県で生まれました.山の中で生まれたものですから、星がたくさん見え過ぎたせいか、天文学が専門ですが、今でも、星座というのはよく分かりません.そういうとこが異端なのかなという気がします(笑).東京へ出て、天文学を専攻しました.最初に就職したところが、当時は東京天文台と呼ばれていましたが、今の国立天文台です.それからずっと、電波天文学の道を進んできました.海部宣男さん(1943?)は私の先輩に当たります.森本雅樹先生(1932?)という非常に元気の良い電波天文学の先生が率いるグループの中で、長野県の八ヶ岳の麓、野辺山に大きな電波望遠鏡を作るという仕事から始まりました.望遠鏡の製作・設計、宇宙の観測など、海部さん達と一緒に頑張りました.そして、科学の結果を多く出すために、天文台をどのように利用したらよいかと、皆で知恵を絞ったものです.

その後、海部さんは「すばる望遠鏡」づくりのほうに移られたのですが、私は、「電波望遠鏡も宇宙に出ていかないといけない.地球規模では小さすぎる」と思ったものですから、平成元年の前の年に、宇宙科学研究所に移りました.ご存知の方がいると嬉しいのですが、宇宙科学研究所では、「はるか」という電波天文衛星の製作設計と観測研究に携わりました.「はるか」は、今から10年前の1997年に打ち上げられました.そのような電波望遠鏡衛星がなぜ必要だったかというと、非常に重いブラックホールの周辺で起こっている不思議な現象を観測するには、それしかなかったからです.

今年の4月、定年で、研究生活の第一線から退きました.現在は、JAXA(Japan Aerospace Exploration Agency:「ジャクサ」と発音)、宇宙航空研究開発機構のなかに、2年程前にできた「宇宙教育センター」の一員として、仕事をしています.教育と言っても、こちらから一方的に教えるというより、何か科学研究をしているという気持ちもありますが、私自身はいろいろ試行錯誤しているところですし、グループとしてもそうだと思います.宇宙教育センターという名前を覚えておいて頂いて、皆さんとまた何か関連があるといいかなと思います.

今日の会場は「ギャラリー円月」ということで、面白い名前だなと思いました.僕が覚えていたのは、眠狂四郎の円月殺法だったのですが、来てみると、教条などが書いてあったりして、やっぱり道場だなと思いました.しかも、始まる前に、会場が円形になっていて、真ん中に大島先生が居て、立会人が居て、ルールがある.「これから何が起こるのだろう」(笑)、「逃げ場はどこにあるのだろう」と探しているのですが、どうも逃げ場はないようですので、何とかよろしくお願い致します.

三井:言い忘れましたが、先程ご紹介した『星と生き物たちの宇宙』の中に、大島さんのことが出ています.生物の定義について、さすが大島さんだというような、とても面白いことを仰っています.ついでに言いますと、平林さんは剣道の達人でいらっしゃるようです.

平林:大島先生とは、地球外文明についての集まりで、初めてお会いしたのですが、それに関することで、いろいろな教えを受けた先生は何人かおられます.電波天文学の森本雅樹先生、化学では、中川直哉(1927〜)先生、そして、生物という意味では大島先生です.これまで何回お会いしたか分からないほどですが、大島先生はお会いする度に非常に意味深なことを仰います.『星と生き物たちの宇宙』の中では、「生物は節操なく継ぎ足し建て増した温泉旅館のようなもの」と仰ったことを紹介していますが、そういうふうに、いつも普通の地球人と違うことを仰るので、大島先生は他の星から来られたのかなと(笑).

実は、昨日も非常に暑かったのですが、道場へ行って剣道の稽古をしてきました.ここでどういうことになろうとも、何とか頑張って、最後迄いきたいと思っています.

三井:どこから切り掛かっても大丈夫そうですね.皆さんが申し込みをなさるときに、疑問・質問を書いて頂いていますが、それを拝見しますと、いくつかの傾向があります.たとえば、地球外生命を探査する方法に興味のある方が何人かいらっしゃいましたけれど、その辺はどうなのでしょうか.

平林:電波が主流だったのですが、最近では光で探すという方法もあります.これは、生き物を直接探すのか、それとも知的な生命体の出す信号を探すのかで大きく違うと思います.電波は知的な信号を探すときにはいいでしょう.生き物の存在ないしは存在に関係するものを探す場合には光がいいでしょう.酸素のようなものは、スペクトル線で分かるのではないかということですね.

三井:海部さんの本には、光学望遠鏡で酸素を探る話が書いてありました.その他に、地球のような岩石でできた星が探れるのではないかとも書いてありました.そうすると、生命の定義の問題になりそうな気がします.地球型の生命でないものを、どうやって探すのでしょうか.

大島:地球の生物は、非常に謙虚というか、「ここに居ます」とは言いませんね.地球の生物は他の生物とは捕食関係にありますから、それは当然なことで、そんなことを言うのは、唯一、人間だけです.人間を食べるものがいないので、自分の身に危険はないからです.

飛行機に乗って地上を見たときに、森林が見えていても、それが生き物かどうかを見分けにくいのですが、真っ直ぐに延びている道路や建物が見えれば、これは人工の物だということがすぐに分かります.これと同じ話は、「2001年宇宙の旅」というSF映画のなかにあります.結局、文明のほうが見つけやすいのです.

知的文明の探査は、電波を使って行われることが多いのですが、これも本当は危ないですね.文明が進むと、エネルギーを無駄なく使おうとするようになります.今の私たちもそういう努力を始めています.電波を地球の外に洩らすというのは、それだけロスが多くなりますが、マイクロ波のように目的のところにだけ集中的に送れば、ロスも少なくなります.つまり、電波で探すことができるのは、程度の悪い文明だけだ(笑)という問題もあるわけです.

A:私は真空の世界が好きで、真空に何十年か携わってきました.先生方が調べているのは、何光年か何十光年かの遠い世界ですから、会話をするといっても、返事がくるまでに何十光年も待たなければいけない.そういう場合の会話は難しいと思います.しかし、遥か昔のことなら分かりそうです.そうした会話を先生方はどのように捉えているのでしょうか.

三井:申し込み時のコメントで、「地球外生命体の文明同士が時間的に重複すること自体極めて稀である」と書かれた方がいらっしゃいます.

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Last modified 2007.11.20 Copyright(c)2005 The Takeda Foundation. The Official Web Site of The Takeda Foundation.