The Takeda Award 理事長メッセージ 受賞者 選考理由書 授賞式 武田賞フォーラム
2002
受賞者
講演録
パネルディスカッション
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パネルディスカッション
 
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西村:
 知的な面白い状況になっていると思うのですが、フロアからありませんか。松原先生、コメント頂けませんか。いまのオープンの問題と、松原先生ご自身がいろいろ関わってこられたことから。

松原:
 日本語でやらせて頂きます。お二人の社会にもたらしたものは、同じような分野でサイエンティフックにもテクノロジカルにも大きなものでありますけれども、アプローチがまったく違うという点で、私は非常に興味がございます。結果をどういう具合に評価するかということでございますけれども、今ブラウンさんがおっしゃったのは、インフォーメーションの生産であるということでありまして、お話のフォダーさんの方では、どちらかというとテクノロジーのデベロップメントによってさらに新しい分野を切り拓くというところに、重点とこれからの方向性を示されたように私は理解しています。どちらかと言いますと、経済的に自立して好きなことができて、自分がこれだと信ずることを動かすためには、公的なお金に頼らないやり方の方が、スピードとパースペクティブを早く実現させるという意味で非常に強力なものであると思いました。それと同時にいろいろなリミテーションもあって、先ほど議論されたところですが、今度は広い知識を最大限に集めて、皆のものを寄せ集めて、皆の持てる力を寄せ集めてするというところで、アカデミックの方に重点をおいた仕事の仕方というのは、スタンフォード大学の周辺で非常に強力なデータベースの生産という形で起こっている、ということにも私は非常に興味を持ちました。こういう具合で、一見同じDNAマイクロアレイというツールの開発から始まったものが、かなり違う方向にすでに動き出している。その動かしているモティーブフォースがそれぞれ違う背景のもとに動いているということに、これからのこういう分野の発展の二つの典型的な姿を見ることができると思います。私はどちらも非常に興味のある実験をしておられると感じております。

西村:
 本当にそうですね。非常に現代的な問題を提起されていると思います。パネリストの他の方この問題についてのコメントがありますか。畚野さんお願いします。

畚野:
 一つのことでもいろんなアプローチがあるのが当たり前なんですね。多様性のある社会でないと活力がなくなる。どっちかがいいとかどっちかが駄目とかという問題ではないのです。両方あることが僕は健全だと思うし、もっといろいろなパスがあってもいいと思うし、経路がですね。ですから、それぞれのいいところを主張されて多様性のある社会を作っていく、競争のないところはみんな堕落するのです、そういう意味で非常に健全だと思います。

聴講者3:
 アフィメトリクスが遺伝子情報への公開アクセスを唱導していることについては、知っています。遺伝子発見の情報の所有権の下に取り組んでいるバイオテクノロジ―のメジャーセクターのイニシアティブに関してコメントして頂きたい。主としてミリアドジェノミクスというユタ州ソルトレイクシティの小さな会社について言っているのですが、コメントをお聞きしたい。

フォダー:
 私は、ミリアドジェノミクスについて特にコメントはしません、それは直接彼らに彼らの戦略について聞くべきだと思うからです。全体的な見方から言えば、特にヒトゲノムとともに今その時期に入ったと思います。米国においてバイオテクノロジー産業で直面している課題とヨーロッパのような世界のほかの国々との関係について話したい。単に発見されるだけのDNAシーケンシングについて当然起きてくる知的財産権と、例えば特定の分子経路の理解とそれをバラバラにする化合物の発見とは区別されるべきだと思います。ですから、付加される知的財産権は、特定の分子経路に対する薬を開発することによるものなのです。自然現象として発生している遺伝子情報を特許とすることが許されている会社があるという状況が米国ではあります。これを他の国、例えばヨーロッパの特許庁だったら、いいえ、自然現象として発生している遺伝子配列は特許にならない、というでしょう。これらの二つの別の存在、例えば米国とヨーロッパコミュニティでは、まったく異なる条件を置くことになります。米国では、どんなものであれ、ヒトを作り上げている分子の種類について研究する自由はありませんが、ヨーロッパに行けば研究できます。地球上でのこれらの異なったストラテジーの間で経済的な不利益が発生し始めていると思います。これは、大変に重要なことだと思います。この研究は地球上のこの部分ではやってもいいが、他の部分ではやってはならない、という意味の不均衡を地球上で作り始めたら、相当深刻な経済的結果をもたらします。さらに、競争効果が発生します。乳がんのテストを例に考えて見ましょう。一般の人々を使う最善のテストを行うためには、最善のテストを作り出すために異なった会社が異なった技術で競合している状況を作りたいでしょうし、乳がんについての成熟したテストを行うためには、できるだけ多くの人でテストできるようにしたいでしょう。もし、なにか禁止令があったら、その国では会社や個人はよりよいテストを作り出すための技術について実際に仕事をすることができないでしょう。許されない不均衡が生じ、多くの場合研究が行われないということが起こるでしょう。私はこういうことを意図したわけではないと思います。これまでと違った検査に関連して価値を作り出したときなどには、知的財産権の本当の余地があると思いますが、50億年の進化の自然現象としてのゲノムシーケンスに対してはその権利はないと思います。これがポイントです。

西村:
 終わる時間の頃に一番活発になるというのが常なのですが、この後表彰式という重要なイベントがありますので、あと一つだけ短い質問があればお受けしたいと思うのですが。

フロア:
 先ほどヒトゲノムの情報について公開というブラウン先生のお話ですが、私としてはぜひ公開していい方向にやって頂きたいと考えております。というのは、地球環境とか人については、私自身は門外漢なんですけれども、これからどうなるかということがぜんぜんわからない。要するに、地球環境が破壊されると言っているけれども、破壊されないかもしれない、人についてもそのDNAをやったらいろいろいいことが起こると言われていますけれども、人については、日本だとDNAを操作したものは嫌われている。こういった関係のものは多様性があって世の中が成り立っていると思いますので、それに破壊されるような、人が消滅するようなことにならないような研究に持っていくためには、公開してみんながやって、いろいろな形で生活者というか我々が永劫にうまく行くようなかたちに研究して頂ければと思いました。

西村:
 コメントと考えてよろしいですね。お答えは特に必要ありませんね。
 時間が来てしまいました。この後、フロアの状態を変えて表彰式の方に移らなければなりませんので、これでパネルディスカッションを閉じさせて頂きます。司会の不手際でどれだけ議論がかみ合ったかわかりませんけれども、私自身としては大変勉強になるお話をたくさん聞けたと思っております。ありがとうございました。


後記
 3応用分野の受賞者による、パネルディスカッションは、第1回の武田賞フォーラムのときから、ぜひやりたいと思っていた企画でした。今回は、無理やり西村さんに司会をお願いして、実現することができました。
 パネルディスカッションというものは、なんらかの共通の基盤のようなものがあって、それをベースに議論を展開していくものだと思います。このパネルディスカッションの場合は、最初に西村さんに、財団の理事として、財団の考え方を説明してもらい、それを議論の基盤としたいと思っていました。ある意味では、私たちの基盤に受賞者の方々にのって頂くという厚かましいお願いをしたわけです。
 結果としては、受賞者の方々のお考えを、財団の考え方との対比でお話頂くことができた、と思っています。議論としては、なかなか深まるところまではいきませんでしたが、財団の考え方を深めていく貴重な手がかりはたくさん頂いたと感謝しています。
 このパネルディスカッションは、フロアの人々の立場、提供される側に立って企画されていなかったではないかと、お叱りを受けるかと思いますが、異分野の交流と受け取って頂ければ、主催者として、これ以上の満足はありません。ありがとうございました。(赤城)







 
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